逆走!アカデミー賞

米・アカデミー賞を何処までも逆走していく、少しのネタバレと少しの熱さの、ゆるい映画紹介ブログです。

第88回アカデミー賞(2016)全受賞作品&ノミネート作品一覧

※ 青文字をタッチするとその映画の紹介記事に飛べます

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★作品賞★

【受賞】「スポットライト  世紀のスクープ」

〜以下ノミネート〜

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

「ブリッジ・オブ・スパイ」

「ブルックリン」

「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

「オデッセイ」

「レヴェナント: 蘇えりし者」

「ルーム」

★監督賞★

【受賞】アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

「レヴェナント: 蘇えりし者」

〜以下ノミネート〜

アダム・マッケイ

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

ジョージ・ミラー

「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

レニー・アブラハムソン

「ルーム」

トム・マッカーシー

「スポット・ライト 世紀のスクープ」

★主演男優賞★

【受賞】レオナルド・ディカプリオ

「レヴェナント 蘇えりし者」“ヒュー・グラス役”

〜以下ノミネート〜

ブライアン・クランストン

「トランボ  ハリウッドに最も嫌われた男」

“ダルトン・トランボ役”

マット・デイモン

「オデッセイ」

“マーク・ワトニー役”

マイケル・ファスベンダー

「スティーブ・ジョブズ」

“スティーブ・ジョブズ役”

エディ・レッドメイン

「リリーのすべて」

“リリー・エルベ/エイナル・モーゲンス・ヴェゲネル役”

★主演女優賞★

【受賞】ブリー・ラーソン

「ルーム」“ジョイ・ニューサム/ママ役”

〜以下ノミネート〜

ケイト・ブランシェット

「キャロル」

“キャロル・エアード役”

ジェニファー・ローレンス

「ジョイ」

“ジョイ・マンガーノ役”

シャーロット・ランプリング

「さざなみ」

“ケイト・マーサー役”

シアーシャ・ローナン

「ブルックリン」

“エイリス・レイシー役”

★助演男優賞★

【受賞】マーク・ライランス

「ブリッジ・オブ・スパイ」“ルドルフ・アベル役”

〜以下ノミネート〜

クリスチャン・ベール

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

“マイケル・バリー役”

トム・ハーディ

「レヴェナント 蘇えりし者」

“ジョン・フィッツジェラルド役” 

マーク・ラファロ

「スポットライト 世紀のスクープ」

“マイケル・レゼンデス役”

シルヴェスター・スタローン

「クリード  チャンプを継ぐ男」

“ロッキー・バルボア役”

★助演女優賞★

【受賞】アリシア・ヴィキャンデル

「リリーのすべて」“ゲルダ・ヴェイナー役”

〜以下ノミネート〜

ジェニファー・ジェイソン・リー

「ヘイトフル・エイト」

“デイジー・ドマーグ役”

ルーニー・マーラー

「キャロル」

“テレーズ・ベリベッド役”

レイチェル・マクアダムス

「スポットライト 世紀のスクープ」

“サシャ・ファイファー役”

ケント・ウィンスレット

「スティーブ・ジョブズ」

“ジョアンナ・ホフマン役”

★脚本賞★

【受賞】「スポットライト 世紀のスクープ」

トム・マッカーシー、ジョシュ・シンガー

〜以下ノミネート〜

「ブリッジ・オブ・スパイ」

ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

「エクス・マキナ」

アレックス・ガーランド

「インサイド・ヘッド」

ピート・ドクター、メグ・レフォーヴ、ジョシュ・クーリー、ロニー・デル・カルメン

「ストレイト・アウタ・コンプトン」

ジョナサン・ハーマン、アンドレア・バーロフ、S・レイ・サヴィッジ、アラン・ウェンカス

★脚色賞★

【受賞】「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

アダム・マッケイ、チャールズ・ランドルフ、“マイケル・ルイス『世紀の空売り 世界経済の破綻にかけた男たち』”

〜以下ノミネート〜

「ブルックリン」

ニック・ホーンビィ、“コルム・トビーン『Brooklyn』”

「キャロル」

フィリス・ナジー、“パトリシア・ハイスミス『キャロル』”

「オデッセイ」

ドリュー・ゴダード、“アンディ・ウィアー『火星の人』”

「ルーム」

エマ・ドナヒュー、“エマ・ドナヒュー『部屋』”

★撮影賞★

【受賞】「レヴェナント: 蘇えりし者」

エマニュエル・ルベツキ

〜以下ノミネート〜

「キャロル」

エドワード・ラックマン

「ヘイトフル・エイト」

ロバート・リチャードソン

「マッドマックス   怒りのデス・ロード」

ジョン・シール

「ボーダー・ライン」

ロジャー・ディーキンス

★編集賞★

【受賞】「マッドマックス   怒りのデス・ロード」

マーガレット・シクセル

〜以下ノミネート〜

「マネー・ショート  華麗なる大逆転」

ハンク・コーウィン

「レヴェナント: 蘇えりし者」

スティーヴン・ミリオン

「スポット・ライト 世紀のスクープ」

トム・マカドール

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

メリアン・ブラントン、メアリー・ジョー・マーキー

★美術賞★

【受賞】「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

コリン・ギブソン、リサ・トンプソン

〜以下ノミネート〜

「ブリッジ・オブ・スパイ」

アダム・ストックハウゼン、レナ・ディアンジェロ、ベンハルト・ヘンリック

「リリーのすべて」

イヴ・スチュワート、マイケル・スタンディッシュ

「オデッセイ」

アーサー・マックス、セリア・ボバク

「レヴェナント: 蘇えりし者」

ジャック・フィスク、ハミッシュ・パーディー

★衣装デザイン賞★

【受賞】「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

ジェニー・ビーヴァン

〜以下ノミネート〜

「キャロル」

サンディ・パウエル

「シンデレラ」

サンディ・パウエル

「リリーのすべて」

パコ・デルガド

「レヴェナント: 蘇えりし者」

ジャクリーン・ウェスト

★メイキャップ&ヘアデザイン賞★

【受賞】「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

レスリー・ヴァンダーウォルト、エルカ・ウォーデガ

〜以下ノミネート〜

「100歳の華麗なる冒険」

ラヴ・ラーソン、エヴァ・フォン・バール

「レヴェナント: 蘇えりし者」

シアン・グリッグ、ダンカン・ジャーマン、ロバート・パンディーニ

★視覚効果賞★

【受賞】「エクス・マキナ」

マーク・ウィリアムズ・アーディングトン、 サラ・ベネット、 ポール・ノリス、 アンドリュー・ホワイトハースト

〜以下ノミネート〜

「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

アンドリュー・ジャクソン、 ダン・オリヴァー、 アンディ・ウィリアムス、 トム・ウッド

「オデッセイ」

アンダース・ラングランズ、クリス・ローレンス、リチャード・スタマーズ、スティーヴン・ワーナー

「レヴェナント: 蘇えりし者」

リッチ・マクブライド、 マット・シャムウェイ、 ジェイソン・スミス、 キャメロン・ヴォルド・バウアー

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

クリス・コーボールド、ロジャー・ガイエット、パトリック・タバック、ニール・スキャンラン

★録音賞★

【受賞】「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

クリス・ジェンキンス、 グレッグ・ルドルフ、 ベン・オズモ

〜以下ノミネート〜

「ブリッジ・オブ・スパイ」

アンディ・ネルソン、 ゲイリー・ライド・ストロム、 ドリュー・カミン

「オデッセイ」

ポール・マッセイ、マーク・テイラー、マック・ルース

「レヴェナント: 蘇えりし者」

ジョン・テイラー、 フランク・A・モンタノ、ランディ・トム、 クリス・デュースターディーク

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

アンディ・ネルソン、 クリストファー・スカラボシオ、 スチュアート・ウィルソン 

★音響編集賞★

【受賞】「マッドマックス  怒りのデス・ロード」

マーク・マンジーニ、デヴィッド・ホワイト

〜以下ノミネート〜

「オデッセイ」

オリヴァー・ターニー

「レヴェナント: 蘇えりし者」

マーティン・ヘルナンデス、ロン・ベンダー

「ボーダーライン」

アラン・ロバート・マレー

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

マシュー・ウッド、デヴィッド・アコード

★作曲賞★

【受賞】「ヘイトフル・エイト」

エンニオ・モリコーネ

〜以下ノミネート〜

「ブリッジ・オブ・スパイ」

トーマス・ニューマン

「キャロル」

カーター・バーウェル

「ボーダーライン」

ヨハン・ヨハンソン

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

ジョン・ウィリアムズ

★主題歌賞★

【受賞】“Writing's on the Wall”

「007  スペクター」

〜以下ノミネート〜

“Earned It”

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」

“Manta Ray”

「Racing Extinction」

“Simple Song #3”

「グランドフィナーレ」

“Til It Happens to You”

「ハンティング・グラウンド」

★長編アニメーション映画賞★

【受賞】「インサイド・ヘッド」

〜以下ノミネート〜

「アノマリサ」

「父を探して」

「ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム」

「思い出のマーニー」

★外国語映画賞★

【受賞】「サウルの息子」(ハンガリー)

〜以下ノミネート〜

「彷徨える河」(コロンビア)

「裸足の季節」(フランス)

「ディーブ」(ヨルダン)

「ある戦争」(デンマーク)

★長編ドキュメンタリー映画賞★

【受賞】「AMY エイミー」

〜以下ノミネート〜

「カルテル・ランド」

「ルック・オブ・サイレンス」

「ニーナ・シモン  魂の歌」

「ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い」

★短編映画賞★

【受賞】「僕はうまく話せない」

〜以下ノミネート〜

「Ave Maria」

「Day One」

「Everything Will Be Okay」

「Shok」

★短編ドキュメンタリー映画賞★

【受賞】「A Girl in the River : The Price of Forgiveness」

〜以下ノミネート〜

「Body Team 12」

「Chau,Beyond the Lines」

「Claude Lanzmann: Spectres of the Shoah」

「Last Day of Freedom」

★短編アニメーション映画賞★

【受賞】「ベア・ストーリー」

〜以下ノミネート〜

「Prologue」

「ボクのスーパーチーム」

「We Can't Live Without Cosmos」

 

 

 

 

〜以上24部門

 

トピック

 

2016年2月28日カリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドのドルビー・シアターで授賞式は行われた。

司会はクリス・ロック、2005年の第77回アカデミー賞授賞式以来の2度目の司会となった。

最多ノミネートは「レヴェナント: 蘇えりし者」の12部門で、次いで「マッドマックス  怒りのデス・ロード」は10部門のノミネートを受けた。

前回の第87回アカデミー賞に引き続き今回も主要な演技部門で俳優が白人で占められていることに批判が上がっており、本年度の名誉賞受賞者であるスパイク・リーが授賞式には出席しないとの声明を発表しそれに続く者が出てくるなど、ボイコット騒ぎに揺れる授賞式となった。

前回でも批判された白人ばかりがノミネートされる(黒人俳優でノミネートに値する作品があるにもかかわらず)アカデミー賞が、連続で続いたことでハリウッドの保守性が浮き彫りになる形となった。

明るい話題で言えば、これまで何度も主演男優賞にノミネートされるも1度も受賞することが出来なかったレオナルド・ディカプリオ、そういう俳優としてもはや定番化してネタにされてきた中で今回遂に念願だった主演男優賞を受賞した。

その時のディカプリオのスピーチ、そして映画人で埋め尽くされた会場のからのディカプリオに対する盛大な祝福は、なにかと騒ぎに揺れた今回のアカデミー賞の中において清涼剤のように印象に残る場面となった。

 

映画『ブラック・パンサー』ティ・チャラとキルモンガーはケンドリック・ラマー!?世界中で大ヒットも納得の画期的な黒人ヒーロー映画の誕生【第91回アカデミー賞】

『ブラック・パンサー』

 

第91回アカデミー賞(2019)

 

【美術賞】

【衣装デザイン賞】

【作曲賞】

 

(C)Marvel Studios 2018

 

原題:「Black Panther」

製作年:2018年

製作国:アメリカ

 

監督:ライアン・クーグラー

製作:ケビン・ファイギ

製作総指揮:ルイス・デスポジート、ビクトリア・アロンソ、ネイト・ムーア、ジェフリー・チャーノフ、スタン・リー

共同製作:デビッド・J・グラント

原作:スタン・リー、ジャック・カービー

脚本:ライアン・クーグラー、ジョー・ロバート・コール

撮影:レイチェル・モリソン

美術:ハンナ・ビークラー

衣装:ルース・カーター

編集:マイケル・P・ショーバー、クローディア・カステロ

音楽:ルドウィク・ゴランソン

音楽監修:デイブ・ジョーダン

視覚効果監修:ジェフリー・バウマン

ビジュアル開発主任:ライアン・メイナーディング

キャスト:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、レティーシャ・ライト、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、アンディ・サーキス、フローレンス・カスンバ、ジョン・カニ、デンゼル・ウィテカー、セバスチャン・スタン

 

 

ワカンダ・フォーエバー!!!

 

え、いきなりどうしたって ?

 

 

一緒にどうですか?まずは「ワカンダ」で腕を胸の前で交差させてXの形を作っておいて「フォーエバー」で一気に下へ振り下ろす!

簡単ですよね、では、いいですか?一緒にいきますよ。

 

ワカンダ・フォーエバー!!!

 

…なんでやらないんですか?

 

気分じゃないと?

もういいでしょう見ていて下さい、

悲しみの、ワカンダ・フォーエバー!!!

…エバー!!

…エバー!

…エバー

 

ということで、はい終わりました。

俗に言う、気が済んだというやつです。笑

 

この「ワカンダ・フォーエバー」ってこの映画の中で度々登場する掛け声なんですよ。

 

だから、もうそれだけ叫んでればとりあえず良さが伝わるかなと思ったんですが、今はもう公開当時では無いということで地道にこの映画の良さを紹介しますかね。 

さあ、とうとうMCU作品です!

「アベンジャーズ」のあのシリーズですよ。

いやあしかしMCU作品がとうとうアカデミー賞に絡んでくる時代になったんですねえ〜。

MCUといえば色々なヒーローがいるんですけどその中ではこの『ブラック・パンサー』は比較的に地味な感じに捉える人も少なくないと思います。

ただしそれはあくまでアメコミに馴染みのない日本ではということで、いざ映画が公開されてみれば世界中でびっくりするほど特大のヒットをかましたわけなんですよね

なんだかんだで日本でもヒットした印象はあるんですけど、アメコミの本場であるアメリカでは全米歴代興行収入3位にまでなってしまうほどメガヒット!これって凄いことなんですよ、『タイタニック』『アベンジャーズ』を一気に抜いたんですからね。

ちなみに2019年8月現在は『アベンジャーズ/エンドゲーム』に抜かれて全米歴代興行収入は4位になってますがこれはさすがにしょうがないですよね、ヒーロー単体の映画に比べて相手はあのMCUヒーロー全員集合の近年最大のお祭り映画ですから。

しかし、それで言えばMCU作品の歴代興行収入の中では全員集合の『アベンジャーズシリーズ』を抜きにしたら『ブラック・パンサー』は単体のヒーロー作品としてはトップです。

最終的には全世界を合わせての歴代興行収入で10位にまでなりましたね。

これは世界で『ハリー・ポッター』のシリーズや『アナ雪』よりもヒットしたって事なんですよ!

それぐらいすごいヒットしたというのは伝わったと思うんですけど、日本だともしかしたらピンとこないところもあるかもしれないのでその辺も含めて面白さを紹介できたらなと思います!

 


「ブラックパンサー」MovieNEX 予告編

 

 

 

 

あらすじ

 

遥か太古の昔、ヴィブラニウムという鉱石で出来た隕石が地球に堕ちてきます。

そこはその後アフリカと呼ばれる地になり、その中でもヴィブラニウムの産地となったワカンダ王国は絶大なパワーを持つヴィブラニウム鉱石のおかげで小国ながらも大いに国が発展して超文明国家になっていくのです。

とにかくこのヴィブラニウムというのは万能な鉱石なので色々な所へ使う事が出来て科学技術が次々と開発されていきます。

しかしヴィブラニウムの事を白人国家などの他国に知られ、奪い取る為に侵略や悪用されることを恐れて世界へ向けては超文明国家であることを科学技術を駆使して隠したり世界中にスパイを放ってずっと秘密を守り通してきたんですよ

だから国際的には、表向きはある種世界から隔離された発展途上国としてきたんですよ。

 

まあつまり、ヴィブラニウムの恩恵を受けて国として大きなパワーを持ちながらも、世界中で起きる惨劇からは「うちは関係ありません」という無介入というスタイルでやってきたってことですね。

 

いたって利口じゃないかって?

 

まあ、もちろんそうとも言えるんですけどね。

 

そうやってかたやワカンダ王国の繁栄と、かたや世界の時代の移り変わりのさなかの1992年、当時の国王であるティ・チャカ(ジョン・カニ)がアメリカ・カリフォルニア州オークランドでスパイとして潜入していた弟のウンジョブの元を訪れます。

実はこのウンジョブワカンダで入手した武器を武器商人のユリシーズ・クロウに横流ししていて、ティ・チャカをそれを問い詰めに来たんですね。

そこでウンジョブ「放っておけない」と言うわけですよ。

アメリカに来てワカンダ王国の外では未だに黒人が虐げられている現実を目の当たりにして、武力でなんとかしようと思ったんですね。

しかし、ティ・チャカ国王「それはならん」ということで、実の弟のウンジョブの胸にその場でヴィブラニウムの爪を突き刺し、国王自ら手を下してしまうんです。

 

そしてその事実を封印します。

 

時は流れ、24年後の2016年。

ウィーンで行われたソコヴィア協定の署名式で起こった爆破テロによって国王ティ・チャカが死亡してしまうのです。

そして息子であるティ・チャラ新しい国王として即位することになり、新たなブラック・パンサーの物語が始まるわけです。

 

ワカンダ王国の新たな国王ティ・チャラの成長をどう描くのか?

 

ヴィブラニウムを狙う武器商人ユリシーズ・クロウ、そしてティ・チャラが越えなければならない謎の敵キルモンガーとの闘いはどうなるのか?

 

先代国王死去にのるワカンダ王国の御家騒動、その先にワカンダ王国が示す道とは?

 

物語は、その辺を注目して楽しんでもらえたら良いかと思います。

 

主要登場人物キャスト

 

●  ティ・チャラ/ブラック・パンサー

演:チャドウィック・ボーズマン

 

(C)Marvel Studios 2018

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中ではワカンダの若き国王とブラック・パンサーという2つの顔を持つ主人公のティ・チャラを演じています。

サウスカロライナ州で生まれたアメリカの俳優さんです。

学生時代はスピーチとバスケが得意で、文武両道だったとのことです。

俳優としては2003年からテレビドラマなどでキャリアを積んでいきます。

映画の出演としては2014年の『ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜』での主人公であるジェームス・ブラウンの完コピ演技が話題を呼びました。

個人的には2013年の『42 〜世界を変えた男〜』での戦後のアメリカで差別に耐え忍び戦った黒人メジャーリーガーのジャッキー・ロビンソンを見事に演じていたのが印象に残ってます。

 

 

●  エリック・“キルモンガー”・スティーヴンス/ウンジャダカ

演:マイケル・B・ジョーダン

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、MCUでも指折りのヴィラン、キルモンガーを演じています。

カリフォルニア州生まれのアメリカの俳優さんです。

俳優の前はトイザラスなどのキッズモデルとして活躍してました。

俳優としてのキャリアは子役から始まって主なところだとキアヌ・リーヴス『陽だまりのグラウンド』など、その後は様々なTVシリーズでキャリアを積んで、世間に注目されたのはやはりライアン・クーグラー監督『フルートベール駅で』での主演ですね。

そして、その後に同じライアン・クーグラー監督『クリード チャンプを継ぐ男』アドニス・クリード役で一気に世界的な知名度と存在感を決定付けて、娯楽アクション大作であるMCU『ブラック・パンサー』でのかなり重要な悪役であるキルモンガーに抜擢されます。

 

ちなみにアメリカの映画ファンからはアニメ好きとしても知られていて、ツイッターで「ジョーダンはもう大の大人なのに両親と暮らしてて、アニメオタク」とバカにされると、ツイッター上でジョーダン「悟空とナルト(アニメ好きなの)はマジだ」と言い切ってましたね。

 

そういえば日本だとテニスの大坂なおみ選手全米オープン優秀した後アメリカのトーク番組に出演した時にマイケル・B・ジョーダンのファンだと言ったら、司会者が「ジョーダンの連絡先知ってるからあなたのこと紹介するわ」と言ってたその場で半ば強引なノリで撮った写メをジョーダンに送って、その後まさかのジョーダン本人から祝福のビデオメッセージが届いたことでちょっと話題になりましたね。

 

●  ナキア

演:ルピタ・ニョンゴ

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダのスパイとして外の世界で活躍しながらも主人公の幼馴染元恋人でもあるナキアを演じています。

両親はケニア人で、メキシコで生まれ現在はアメリカで活躍する女優さんです。

メキシコで生まれた後すぐ父親の仕事の都合でケニアに戻りそこで育ちます。

演技のキャリアとしては学生時代の舞台から始まりアメリカのハンプシャー大学で映画と演劇を学んだ後に、映画の製作スタッフとしても参加しながら短編映画『East River』に出演します。

その後ケニアに戻り、テレビシリーズに出演したり『In My Genes』というアルビノ治療についてのドキュメンタリー映画を製作・監督したりします。

その後はイェール大学の演技プログラムに参加し、様々な舞台作品に出演します。

そして2013年のスティーヴ・マックイーン監督によるアメリカ歴史映画『それでも夜は明ける』に出演、その後は『フライトゲーム』『スター・ウォーズ  シリーズ』マズ・カナタ『Us』など様々な映画注目作で活躍していますね。

 

 

●  オコエ

演:ダナイ・グリラ

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダ王国の国王親衛隊“ドーラミラージュ”隊長、そして主人公ティ・チャラのボディガードを務めるオコエを演じています。ジンバブエ出身の両親からアイオワ州で生まれたアメリカの女優さんです。

舞台と映画でキャリアを積んだ後TVシリーズの『ウォーキング・デッド』ミショーン役で注目されます。

 

 

●  エヴェレット・ロス

演:マーティン・フリーマン

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では今作の味方キャラで唯一の白人であるCIA捜査官のエヴェレット・ロスを演じています。

イングランド出身でイギリスの俳優さんで、2001年にイギリスBBCのTVシリーズ『The Office』ティム・カンタベリー役で有名になります。

その後、『ラブ・アクチュアリー』『銀河ヒッチハイク・ガイド』など映画に出演し、2010のBBCのTVシリーズ『SHERLOCK(シャーロック』のワトスン役で世界的な知名度となり、それを受けてピーター・ジャクソン監督『ホビット3部作』で主人公ビルボ・バギンズに抜擢されます。

最近だとTVドラマ版『FARGO/ファーゴ』などに出演しています。

個人的には、元々コメディ畑ということもありエドガー・ライト監督『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』の演技も結構好きですね。

 

 

●  ウカビ

演:ダニエル・カルーヤ

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダの“ボーダー族”のリーダーであり主人公ティ・チャラの親友であるウカビを演じています。

ロンドンで生まれたイギリスの俳優さんです。

『ジョニー・イングリッシュ気休めの報酬』『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』『ボーダー・ライン』などで脇役として出演してますね。

 

なんと言っても、2017年のジョーダン・ピール監督のホラー映画『ゲット・アウト』で主人公クリス・ワシントンを演じて一躍注目されるようになります。

 

 

●  シュリ

演:レティーシャ・ライト

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、主人公ティ・チャラでワカンダ王国の王女であり技術開発チームを率いる天才科学者のシュリを演じています。

 

ガイアナ共和国ジョージタウン出身のイギリスの女優さんです。

 

映画では他に『トレイン・ミッション』、あと『レディ・プレイヤー1』にもチョイ役で出演していましたね。

 

 

●  エムバク

演:ウィンストン・デューク

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダの山の中に住み長い間ワカンダ王国とは距離を置いてきたジャバリ族のリーダーであるエムバクを演じています。

トリニダード・トバゴで生まれアメリカへ移住したアメリカの俳優さんです。

TVシリーズでキャリアを積み、今作『ブラック・パンサー』で映画出演を果たします。

その後は『アベンジャーズシリーズ』2作に出演しています。

 

 

●  ウンジョブ

演:スターリング・K・ブラウン

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダの先代国王ティ・チャカの弟でウンジャダカウンジョブを演じてます。

 

ミズーリ州生まれのアメリカの俳優さんです。

俳優としては地方の舞台からスタートし、様々なTVシリーズや映画などでキャリアを積みます。

特に、2016年から始まったNBCのテレビドラマ『THIS IS US』での演技が高く評価され、アフリカ系アメリカ人では初めてゴールデングローブ賞男優賞(ドラマシリーズ部門)を受賞しています。

『ザ・プレデター』にも出演してましたね。

 

 

●  ティ・チャカ

演:ジョン・カニ

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ティ・チャラシュリ父親であり、ワカンダ王国先代国王ティ・チャカを演じています。

 

南アフリカの俳優さんです。

 

 

●  ラモンダ

演:アンジェラ・バセット

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ティ・チャラシュリ母親でありワカンダ王国女王ラモンダを演じています。

 

ニューヨーク・ハーレム出身のアメリカの女優さんです。

『マルコムX』を始め、多数の映画やTVシリーズで活躍していて、1993年の『TINA ティナ』ではアフリカ系アメリカ人女優として初めてゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞しています。

 

 

●  ズリ

演:フォレスト・ウィテカー

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダの王位継承の儀式を取り仕切る高僧で、先代国王のティ・チャカ側近でもあったズリを演じています。

 

テキサス州で生まれカリフォルニアで育ったアメリカの俳優さんです。

始めは俳優ではなくオペラ歌手を目指して南カリフォルニア大学でクラシック音楽と演劇を学んだ後、俳優の道へ進み数々の映画やTVシリーズに出演してキャリアを積みます。

『プラトーン』『バード』『クライング・ゲーム』など、まあ、今やベテラン俳優ですね。

特にイーストウッド監督作『バード』ではカンヌ国際映画祭男優賞を受賞してますね。

 

最近だと今作の監督ライアン・クーグラー『フルートベール駅で』や、『メッセージ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などに出演しています。

 

 

●  ユリシーズ・クロウ

演:アンディー・サーキス 

 

(C)Marvel Studios 2018

 

劇中では、ワカンダ王国の資源であるヴィブラニウム鉱石の密輸を企てる武器商人ユリシーズ・クロウを演じています。

 

ロンドン出身のイギリスの俳優さんです。

 

舞台や映画でキャリアを積みます。

ピーター・ジャクソン監督の作品によく出演していて1番有名なのは『ロード・オブ・ザ・リング』ゴラムで、モーションキャプチャと言われる手法で(特殊なセンサーやマーカーを身体に貼り付けて実際の人物の動きをデジタル的に記録してCGの映像に反映させる)、それ以降は一流のモーションキャプチャアクターとしても大活躍してますよね。

 

個人的にはアンディ・サーキスのモーションキャプチャではリブート版『猿の惑星』シーザー役がすごい好きです。

 

 

●  ギャンブラー

演 :  スタン・リー

 

(C)Marvel Studios 2018

 

韓国の釜山のカジノで遊んでいた老人を演じています。

言わずと知れた、アメコミ界の巨匠であり数々の人気ヒーローを生み出してマーベルの父と呼ばれるレジェンドです。

2018年11月12日に95歳でお亡くなりになり、MCU映画の恒例行事であったカメオ出演する謎の老人ももう観ることが出来ないと思うと残念です。

 

ヒットの理由を探る

MCU作品として

まずなんと言ってもこの『ブラック・パンサー』は皆んな大好きMCU18作品目であり、当時はその最新作というわけでもちろん注目されるわけです。

しかも『キャプテン・アメリカ  シビル・ウォー』のきっかけにもなってしまったウィーンでのソコヴィア協定の一件で、国王を殺害されたワカンダ王国のその後ということで気になりますからね。

ちょっとここでMCUについて1から説明すると時間が吹っ飛ぶことになるので詳しい説明は今はしませんが、『アベンジャーズ』に代表されるようにそれぞれ単体映画のヒーロークロスオーバーしていく世界観が大きな特徴です。

いわゆるユニバースってやつです。

このユニバースってのは非常に楽しいやり方ではあるんですけど、作品の数が増えてくるのにしたがってどんどん続き物の要素が多くなってきて「映画の連続ドラマ化」してくるわけなんで一見さんにはハードルが高くなるところ『ブラック・パンサー』はクロスオーバーの要素も最低限なのでこの作品単体でもヒーローアクション映画として楽しめるんです!

極端な話、初めてMCUを観るというような人でも全然楽しめる作品だと思います。

 

画期的な黒人ヒーロー映画として

 

この規模の大作のヒーロー映画では主人公が黒人という設定は非常に珍しくて、MCUでは初めて、そして意外な事にディズニーでも初めてのことなんですよ。

更に黒人監督の手によって作られてるんです。

 

今までなかったのかって?

 

ウェズリー・スナイプス主演の『ブレイド』とかは浮かぶんだけどあれはどちらかと言えば変化球ダークヒーローで、今作のように王道のヒーロー映画、つまり今までなら当たり前のように白人が演じてきた類のヒーロー黒人キャストで作ったってのはほとんど例が無いんじゃないですかね。

僕が知らないだけかもしれないですけどね。

 

ちなみに黒人が主人公を演じると言っても、70年代に流行ったアフリカ系アメリカ人をターゲットにした黒人俳優が主役のブラックスプロイテーション映画の数々はちょっと違う流れだと思っています。

 

それだけじゃありませんよ。

 

監督も黒人、のみならず映画のスタッフもほとんど黒人で固められ、世界中から腕利きの人材を集めてきて作られた作品なんですよ。

 

あとキャストですね、この映画って主人公だけじゃなく主要からチョイ役に至るキャストのほとんどが黒人の役者さんです。

それも当然で、だって物語の舞台が架空の国とは言えアフリカのワカンダ王国アクションヒーロー映画なんですから、画面に登場する人物のほとんどが黒人だけで構成されてるのも自然な事ですよね。

でも今まで誰もやってないんですよ、この規模とこのジャンルでほとんど黒人だけで作るってことを。

やはり興行的にも成功しないと思われてたんです。

 

で、それを見事に覆してみせたのがこの映画ということですごく画期的な作品なんです。

 

黒人による黒人のための王道作品という側面もあるとは思うけど、やっぱ射程はそれ以上に大きく「黒人だけで作った映画でも世界中の人々を楽しませることが出来ることを証明するんだ」という意気込みが作品からビシビシと伝わってくるのがまた良いんですよ。

 

となると、まず作品の土台ですよね、この舞台となるワカンダ王国が魅力的じゃないと話にならないわけです。

 

アフロヒューチャリズムの継承作品として

アフリカの奥地にある架空の国であるワカンダ王国

まずこのワカンダ王国の描き方が新鮮なんです。

 

皆さんはアフリカと聞いてどんなイメージを持ちますかね?

野生動物だったり貧困だったり、何なら割と民族色の強い土着的イメージを持ってる人も少なくないと思います。

 

テレビで見るアフリカはだいたいそんな感じ、って?

 

そういった部分も決して間違ってる訳じゃないんですけど、やっぱテレビのバラエティとかだと「僕らがイメージする(見たい)アフリカ」というのを拾ってきますからね。

 

でもそんな僕らだからこそ、なおのことこのワカンダ王国が新鮮に感じられるはずです。

 

なんたって、ものすごいオシャレでハイテクな未来都市として描かれてるんですから。

 

表向き(バリアの外)は正に我々がイメージする通りのアフリカの小国で、いざワカンダ王国に入ってみればヴィブラニウムという万能鉱石のおかげで世界一の科学文明を持つ国なのです。

しかもアフリカの民族衣装カラフルなデザイン装飾ハイテクな科学文明と混ざり合っていて、そこが結構新鮮なんですよ。

 

(C)Marvel Studios 2018

(C)Marvel Studios 2018

ハイテクとアフリカンとの融合、ワカンダ王国

 

今言った、こういうワカンダ王国のような世界観って実は昔あったんです。

「アフロヒューチャリズム」と呼ばれ、主に音楽の世界のヴィジュアル・コンセプトや思想として表現されてました。

宇宙的な、SF的な、あとピラミッドとかね、そんなイメージの中で黒人アーティストがファンクを奏でるという凄くインパクトのあるヴィジュアルで、PVCD/レコードジャケットになってりしてたんですよね。

1番有名だと「アース・ウィンド&ファイアー」とかになるんですかね。

 

で、それを音楽じゃなく映画の娯楽大作で現在のクオリティで再現したのが『ブラック・パンサー』のワカンダ王国なんです。

 

でも実際のアフリカとこの映画のような「アフロ・ヒューチャリズム」とは違うんじゃないかって?

 

それがあながち違うとも言えないんですよ!

 

イメージの話に戻りますが、さっき言ったように僕らが思う昔ながらの「ザ・アフリカ」的なイメージは古くて、ここ10年20年かけて少しずつ豊かになってきて近年ではハイテク化もかなり進んでるんですよ。

分かりやすいところだとマサイ族にもスマホが行き届き、何なら副業でWebライターをやってる戦士もいるぐらいです。笑

 

なんでアフリカはこんなに変わったの、って? 

 

そうですね、その辺は次で触れてみようかと思います。

(C)Marvel Studios 2018

アフリカ民族仮面とウーハースピーカーが混ざったデザインと機能の航空機。

アフリカの変化の象徴として

 

そもそもアフリカってまあ今でこそ発展途上国のようなイメージが定着してますけど、歴史上ずっとそうだった訳じゃないんですよね。

 

例えば昔、それこそ中世なんかはアフリカ文明科学発展していて、はっきりいってヨーロッパよりも全然進んでたんですよ。

むしろ中世ヨーロッパは最もキリスト教の影響と縛りが強い時期で、今では信じられないことに当時は世界の中でもどちらかといえば遅れている方だったんですよ。

今と逆で、隣接する中東の方が発展してたり。

『アラビアのロレンス』とか観ればまさにそんな感じで描かれていますね。

 

しかしその後、ヨーロッパ産業革命が起こったりして逆転されます。

そこから帝国主義の煽りを受けてアフリカはヨーロッパ各国に分割&植民地にされてしまうのです。

 

植民地時代のアフリカに対してヨーロッパ各国が行った事と言えば、奴隷制が無くなるまでは奴隷を好きなだけ持っていき、その後は資源を好きなだけ取っていく。

つまり、発展して潤っていたアフリカから養分を吸い尽くしてカラッカラにしていったんです。

 そもあってアフリカの国々は植民地から独立した後も発展が遅れていったんですね。

 

しかし、ここ10年20年ぐらいはアフリカが自分の国の資源を正当に自分達の為に使えるように方々様々に力を尽くしたおかげで次第に豊かになってきているんですよ。

だから、まだまだアフリカは沢山の問題を抱えてますが少しずつ例えばハイテクを使って問題を解決することも出来るようになってきたわけです。

 

そういった背景もこの映画やワカンダ王国の世界観に反映されているんです。

 

あと、大事なポイントの1つに白人諸国がアフリカから搾取していった資源の中には地下資源というのが沢山あります。

金、銀、ダイヤモンドなどの鉱石です。

 

このアフリカの地下資源を表しているのが『ブラック・パンサー』においてワカンダ王国のヴィブラニウム鉱石というわけですね。

 

そういう意味でこの映画は、もしも白人諸国に植民地にされず資源を搾取されなかったら今頃更に発展してたかもしれないアフリカの姿をワカンダという架空の国として表しているとも言えるんです。

 

注目監督の世界デビュー戦として

この映画の監督はライアン・クーグラーという若手の黒人監督です。

カリフォルニア州オークランドに生まれて幼少期はフットボールに打ち込み、南カリフォルニア大学で映画を学んで卒業しました。

 

このライアン・クーグラー監督、僕らのような映画好きの間ではなんと言っても『クリード  チャンプを継ぐ男』を作り上げた男としてその名を知られる監督ですよ。

 

あの『ロッキー』シリーズのまさかの続編を考え、誰にも頼まれてもないのに自ら脚本を書きあげ遂にスタローンと面会するに至るわけです。

そこで情熱の限りスタローンを説得するわけですよ、ロッキーの続編を作らせてくれと。

 

長編映画を1本も撮ったことない、この間まで学生だったような監督がですよ?笑

 

だから当然スタローンも乗り気になれず、この話は流れるわけです。

いくら情熱があってもあれだけ綺麗に終わった『ロッキー・シリーズ』の続編を作らせるにはどう考えてもこの若者には力不足だと思ったんですね。

そこでクーグラー監督は初めて1本の長編映画を作るんです。

『フルートベール駅で』という映画を、これは実際に2009年にオークランドの地下鉄フルートベール駅で起こったオスカー・グラント3世射殺事件を描いた作品です。

これが低予算の作品ながらとても評価され、その年のカンヌ国際映画祭“ある視点部門”作品賞を受賞するまでに至ったんですよ。

ちなみにこの時に、その後クーグラー監督作品の常連となる盟友であり俳優のマイケル・B・ジョーダンと出会います。

 

そうやって監督としての実力を見事に証明して、実績を作って再度アタックしてようやく『クリード  チャンプを継ぐ男』を作ることが出来て、いざ公開されると劇場で多くの観客をボロボロに男泣きさせる傑作となるわけです。

 

そんなライアン・クーグラー監督長編映画3作目にしてまさかのMCU映画監督に大抜擢、スケールもバジェット(予算)も段違いでなおかつ世界の幅広い観客を相手に映画を成功させないといけない、つまり全世界に向けて監督デビューする。

そんな状況でクーグラー監督『ブラック・パンサー』をどんな作品にするのか注目する人も多かったのです。

 

ブラック・ミュージック映画として

 

この映画、劇中で流れる音楽の使い方をとても大事にしています。

なぜならブラック・ミュージックも、黒人文化や歴史を背景に作り込まれる『ブラック・パンサー』には欠かす事のできない要素だからです。

選曲もその場面場面でちゃんと映画のシーンと意味が重なるように使われています。

 

そのクオリティは、クーグラー監督作品を毎回手がけていてしっかり分かっているルドウィグ・ゴランソンの音楽と、もう1人今作ではケンドリック・ラマーの存在も大きいですね。

 

ケンドリック・ラマー作品として

 

ケンドリック・ラマーといえば現在アメリカヒップホップシーン、いや音楽業界において最も重要な人物の1人と言っても過言ではない存在でここ数年の知名度の上がり方もハンパないので曲は知らなくても名前は聞いたことあるという人も多いと思います。

 

そのケンドリック・ラマーがこの『ブラック・パンサー』で使われる劇中の曲をいくつか手がけたり新曲として書き下ろしたりしてるんですね。

それだけじゃなく、クーグラー監督が熱望して映画のサウンドトラックの監修もケンドリック・ラマーが行なっています。

面白いのが、映画のサントラでもありインスピレーションアルバムにもなっていて、完成してみればある意味でケンドリック・ラマーの新アルバムのような感じになってるところですね。

アルバム『DAMN.』の次を待ちわびてる世界中のファンにとっては、まさか映画の方向からケンドリック・ラマーの新作が聴けるということで注目されたんです。

 

『ブラック・パンサー』というテーマからアルバム1枚作れてしまうぐらいケンドリック・ラマーインスピレーションを受けたってことですね。

 

それはなぜか、って?

 

『ブラック・パンサー』という作品のテーマの部分と、ケンドリック・ラマーが今までラップで表現してきた内容が共通するところが多かったからじゃないですかね。

 

理想と現実、普遍的な問題として

 

さっき言ったケンドリック・ラマーですが、カリフォルニア州コンプトンで生まれ育ち、昔のコンプトンですからね治安もヤバくて周囲の友達は皆ギャングを選んでいく、そんな環境の中で、過酷な現実と気高き理想の間で葛藤している様子が色々な形の二面性として歌詞に表れています。

この理想と現実、その二面性というのがまさに『ブラック・パンサー』における穏健な理想派ティ・チャラ過激な現実派キルモンガーなんですね。

これは現実でも普遍的な問題で、例えば黒人の歴史として理想を掲げ世界を変えようとするキング牧師と、現実の過酷さを暴力で世界を変えようとするマルコムX、この2つの考え方の対立は当然『ブラック・パンサー』の下地の1つになってるわけですが、ケンドリック・ラマーという1人の人間の中にその2つの考えがあるから葛藤するんです。

ティ・チャラもキルモンガーもどっちも俺だよ!ってことですね。

 

ていうか人間誰だって二面性があると思うんですよ、それを隠さないケンドリックの歌詞に皆は共感するし勇気づけられ、時には考えさせられるわけです。

 

だからティ・チャラとキルモンガー、この2人は鏡のような関係なんですよ。

環境や歴史の掛け違えによっては逆の立場になっていた可能性だって全然あり得る2人なんです。

だからこそティ・チャラはキルモンガーを正面から受け止めなければならないんですよ物語上の展開でも作品テーマとしても、だって彼は「自分」でもあるから。

それが分かっているから次は逆にキルモンガーもティ・チャラを正面から受け止めるしかなくなるんですよ。

そこがキルモンガーは、敵としてとても魅力的なキャラクターになってると思いますね。

 

ケンドリック・ラマー1人の心の中にこの2人が居るように、あれだけ激しく対立するティ・チャラキルモンガーが目指すものは結局は同じなんです、1つなんですよね。

対立していたキング牧師とマルコムXが最後の方では実は歩み寄ったように、目指すところが同じならば歩み寄ることもできるはずです。

 

これって僕らの心の中の葛藤でも同じことで、何か理想と現実との間で葛藤して、そこから1歩前に進めた時って多分心の中で2つの考えがお互い歩み寄ってるんですよ。

じゃないといつまで経っても何1つ前に進まないですよね。

 

1人の心の中でもそうだし、人と人、国と国でも同じことなんじゃないかと思います。

 

だからこの『ブラック・パンサー』では、黒人の歴史的な背景を象徴した諸々の設定や物語を通して誰にでも当てはまる普遍的な問題というのをちゃっかり描いてるのが凄いと思いましたよ。

 

ティ・チャラとキルモンガー、地下鉄道での2人の最後の戦いはお互い歩み寄る為の大事な過程に見えました。

 

もう僕なんかあれですよ、過激な現実路線のキルモンガーの最後のとあるセリフなんか聞いた時はね、「なんだよ、それってお前が1番理想追いかけてたんじゃねえかよ…バカ野郎…」と思ってもう涙が出てしまいましたからね。

なんて純粋で不器用なやつなんだって、もうね…ん?

 

僕の涙の話はどうでもいい、って?

 

まあ、そりゃそうですよね。笑

 

でも観終わってから、映画の冒頭のワカンダ王国の歴史をおとぎ話として説明するシーンを観返すと印象が変わり、誰が誰に対して語ったおとぎ話かを考えるとちょっと泣けてしまいますよね。

 

おわりに

 

どうですかね、『ブラック・パンサー』がなぜここまでヒットしたのか分かってもらえたでしょうか。

この映画のもう1つ大事なメッセージとして対立するもの同士が歩み寄ろうにもお互い何を目印に踏み出せばいいか分からない時は、「愛」を目印にしようよ、と言っていますね。

この映画では「歩み寄りのシーン」というのがいくつもでてきますが、その時に必ず何らかの愛が目印として双方を取り持ってくれているんですよね。

分かりやすいところだと、終盤のワカンダ王国の政治的混乱の中で恋仲同士対立することとなったオコエ(ダナイ・グリラ)ウカビ(ダニエル・カルーヤ)、お互いがワカンダの為を思っての行動した結果恋人同士で戦うことなってしまった2人が歩み寄って戦いを中止するその目印にしたのはでした。

 

そしてやっぱ映画の最後ですよね。

カリフォルニアはオークランド、まるで幼き頃の頃のキルモンガーを思わせる少年に対してティ・チャラが語る物語は、憎しみよりも愛を選ぼうぜということなんですから!

 

しかも、それを直接劇中のセリフで言うのではなく、その直後に流れるエンディング曲歌詞の中で語るとかもう、『ブラック・パンサー』という題材に対してほんと気の利いた作りですよね。

 

この記事もそのエンディング曲例の掛け声で締めたいと思います。

 

ワカンダ・フォーエバァー!

 


Kendrick Lamar, SZA - All The Stars

映画『イカロス』下手なフィクションよりもスリリング!ロシアとスポーツとドーピングのイカス関係【第90回アカデミー賞】

『イカロス』

 

第90回アカデミー賞(2018)

 

★【長編ドキュメンタリー映画賞】

 

 

原題 : 「Icarus」

製作年 : 2017年

製作国 : アメリカ

 

監督 : ブライアン・フォーゲル

製作 : ダン・コーガン、ブライアン・フォーゲル

脚本 : ブライアン・フォーゲル、マーク・モンロー

キャスト : ブライアン・フォーゲル、グレゴリー・ロドチェンコフ

 

 

結局やっぱり恐ロシ…おっとこれ以上言うと身の危険が。

 

さて、これはドキュメンタリー映画です。

Netflixオリジナルドキュメンタリーということで、日本だとNetflixから観れるんだけど配信が始まった時に内容が内容だけに当時少し話題になったんでタイトルぐらいは知ってる人もいるかもしれませんね。

 

イカロスと言えばギリシャ神話のあれですよ、ロウでくっ付けた借り物の翼で飛んで太陽に近づいたら溶けて真っ逆さまに墜落していくあれですよ。

つまりこれはですね、「借り物の力」ドーピングに関するドキュメンタリー映画です。

 

その内容のヤバさというのは後で説明するとして、この作品を紹介する理由は単純に面白いからです。

 

ドキュメンタリー映画って淡々としていて退屈そうって?

 

そういうタイプの作品もあります。

しかしこの作品『イカロス』は観る人を飽きさせないように映画としてとても面白く観れるように仕上がってるんです。

きっと観た人の多くが「ちょっとこの映画、入り口と出口の大きさが全然違うんですけどー!」と思うことでしょう。笑

 

そんな前置きよりも、これはさっさと紹介した方が早いですね!

 


国家ぐるみのドーピング疑惑を暴く衝撃ドキュメンタリー『イカロス』予告編

 

 

 

あらすじ

 

あらすじと言ってはみても、この映画の場合はあらすじを書いてたら結局最後まで説明してしまいそうなのでまず事の発端を触れてみる感じにしましょうかね。

そもそもこの作品の監督であるブライアン・フォーゲルという人は自転車レースが好きなんですよ。

 

急に何言うのって?

 

いやそれが事の発端なんですよ!

 

フォーゲル監督が中1の時に、ツール・ド・フランスという100年以上の歴史を持つ世界的な自転車ロードレースでグレッグ・レモンという選手がアメリカ人初の王者になったのを見て当時のフォーゲル少年も自転車を始めたんです。

 

その後アマチュアの選手として監督も数々の自転車レースに参加するも時速60キロで転倒して怪我をして1度は自転車をやめていました。

しかし自分とほぼ同世代のランス・アームストロングというアメリカ人選手が癌との闘病から復活してツール・ド・フランスを7連覇する偉業を見て憧れてまた自転車をやり始めます。

そこまでは良いんですが、なんとアームストロング薬物ドーピングをしていたことが発覚してツール・ド・フランス7連覇を剥奪されることになるんです。

このランス・アームストロングのドーピング問題に関しては『疑惑のチャンピオン』という伝記映画があるんでよければ観て下さいね。

 

とにかく憧れの人の記録がドーピングによって作られてた事にショックを受けたフォーゲル監督はこう思った訳です。

「アームストロングが現役中に500回も検査したのに全部パスしてたんなら、検査なんて意味ねえじゃん」

 

だったらよお!ということでフォーゲル監督がドーピングをしまくって有名な自転車レースで結果を残して、薬物検査の無意味さを世の中に突き付けるドキュメンタリー作品を作ってやるぜ。

そんな自分の身体を実験台にした体当たり型のドキュメンタリー映画なんです!

 

どうですか、この時点で結構面白そうでしょ!?

 

ブライアン・フォーゲル監督

引用:NETFLIX

 

前半と後半、まるで違うジャンルの映画

前半ワクワク後半ハラハラ

 

まず前半は監督がドーピングをバレずにレースで良い結果を残すというミッションに挑む様子をカメラは追っています。

本来ならやっちゃいけない事に挑戦してる訳で、だから観てる僕達も共犯関係のような感覚にさせて自然とワクワクするような作りになってるんですよ。

 

さあそして、いざドーピングしようと思った時に自分1人では何も分からないってことで、専門家に協力を求めたい。

そこで、監督は誰にその話を持ちかけたかというとUCLAオリンピック研究所を運営していたドン・キャトリンという人物なんですが、実はこの人は薬物検査を開発した人なんですよ。

 

つまりドーピングした選手を摘発する為に薬物検査というのを作った張本人にドーピングのアドバイザーになってくれと頼んだわけです。笑

 

そりゃさすがに無理だろうと思ったら「面白いアイデアだ」と、意外と話に乗ってくれて、なんと協力してくれる事になるんです。

 

しかしこのドン・キャトリンさん、途中で、「やはり私が関わってたらまずい」ということで降りてしまいます。

その代わりにと紹介されたのがモスクワ・オリンピックラボに勤めるグレゴリー・ロドチェンコフという人で、そこから本格的にドーピングのチャレンジが始まるのです!

 

まず、このロシアのモスクワに住むグレゴリーという謎のおっちゃんがまた良いキャラをしてるんですよ。

よく喋るし、冗談をかましてきて明るいし、それもなぜか基本的に上半身裸で。笑

冗談を言った後に舌をペロッて出すチャーミングなおっちゃんですね。

しかしドーピングの指示は的確に出してきます。

 

そんなグレゴリーの協力のもと監督は薬の入った注射を太ももにぶっ刺し、尻にもぶっ刺し自転車レースのトレーニングを重ねるわけです。

そしてロードバイクの速さの目安であるワット数もドーピングを始める前の年よりも20%アップするんですよね。

当然といえば当然だけど、ああやっぱドーピングって効果あるんだな〜と思ったりね。

 

いつもはグレゴリーとのやりとりはロシアとアメリカということでパソコンを使ったビデオ通話なんですが、薬物検査が近づくとグレゴリーがアメリカの監督の元へ訪れて直に対策を講じたり、レースの後は監督をモスクワに招いたりと2人は良い関係を築いていきます。

 

そんな中、このドキュメンタリー映画の企画そのものをゆるがす重大な事が起こります。

 

2015年11月9日、WADA(世界反ドーピング機関)が世界へ向けてとある発表をしました。

それは要約すると、陸上競技においてロシアが組織的にドーピングしている事実を確認した、というものでした。

そしてそのロシアの組織的ドーピングやその他隠蔽工作を行なっていた中心人物があのグレゴリーだったんです!

 

そこからこの作品は、監督自身が自らの体を張って薬物検査の無意味さを暴く目的から、ロシアの国家ぐるみの巨大なドーピングを暴き告発する内容に変わっていきます。

そしてこのドキュメンタリー作品の主人公は監督からグレゴリーのおっちゃんへと変わっていくのです。

 

そこからの展開は、とにかくスリリングで面白くて、どんどんスケールが大きくなっていきます。

陸上競技だけではなく、全ての国際競技でドーピングが行われていたことが徐々に明らかになっていき、それはオリンピックにまで及びます。

これは今までメダルを量産してきたロシアにとって信頼を根底から覆すことですよね。

 

この国家ぐるみのドーピング、もちろんグレゴリー単独の意思でやったわけはなくてそれを指示した人間がいるのです。

それを辿るとロシアの大物政治家が次々と浮かび上がるわけですよ、そしてやはり行き着くのはあの人物ということになるんですね〜。

これは恐ろしいところへ足を踏み入れた、このままこれを製作をして大丈夫かというところで、しかしグレゴリーやフォーゲル監督やこの作品の制作陣もこの問題を暴き切る方向に覚悟を決めるんですよ。

 

そこからは作品のプロデューサースノーデンの弁護士なども加わり、ロシアを相手にどう戦略的に告発し、グレゴリーを亡命させるかという展開になっていきます。

これらが画面上ではノンフィクションで現在進行形で描かれるのでスリリングなんです。

 

あとは、もうこの作品を観てもらった方がいいと思いますね!

 

ロシアの諜報機関のことや、関係者が謎の死を遂げたり、更にはNYタイムズFBI司法省IOC(国際オリンピック委員会)まで巻き込む事態にまで広がる様子をハラハラしながら観て下さい。

 

グレゴリーのオッチャン

引用:NETFLIX

 

 鍵を握る小説とは

 

「偽りがまかり通る世の中で、真実を伝えることことは革命的行動となる」

 

 

という言葉からこの映画は始まります。

 

これはジョージ・オーウェルというイギリスの作家の言葉で、その代表作「1984」という小説がこのドキュメンタリー作品に何度も引用されます。

 

この「1984」という小説については、それだけで記事が1つ書けるぐらい大変な作品なのでここで詳しく説明はしませんが、大雑把に言うと全体主義に支配された恐ろしさを描く近未来が舞台のSF小説です。

 

とてと面白く、とてもげんなりします。笑

 

しかしディストピアSF物でありながら、今の時代に驚くほど重なるところもあり、読んで損はない本だと思いますね。

 

まあとにかく、この小説をグレゴリーのおっちゃんは何度も読み返すほど影響を受けていることから、この映画の一種モチーフ的に扱われているんですね。

 

その小説の中に出てくる言葉で「二重思考(ダブルシンク)」というものがあります。

この「二重思考」というのが、この映画と大きく関わってくるんです。

 

これは「1984」の中で登場する、人々の思考に関する概念で、作中の説明では「相反し合う二つの意見を同時に持ち、それが矛盾し合うのを承知しながら双方ともに信奉すること」とあります。

例えば2+24だけど党が5と言えばそう思うことが出来る、みたいな感じで前者と後者との間にある“明らかな矛盾を意識的に無視して純粋に双方を信じることができる”思考能力です。

この小説の中では舞台となる全体主義国家では監視や管理によって民主主義は存在しないという事実を信じながらも、国家を支配する「党」が民主主義を守護する存在だというプロパガンダをも同時に信じることができる思考状態を指してるんですが、「二重思考」を実践してると自分の現実認識を絶えずプロパガンダと合致する方へ自ら思考を操作するようになってしまうんです。

 

そしてこの「二重思考」的な考えが、ドーピングに関してロシアが明らかに黒だと分かっていながらも真っ白としてオリンピックに受け入れる又は応援することに重ねられていくんですよね。

 

この作品の優れた所

 

このドキュメンタリー映画がとても面白く観れたのは内容のヤバさもそうだけど、観客を飽きさせないように1つのエンタメ作品としても工夫されてたからなんですよ。

まず、映像がショボくないのが良いですね。

ところどころ美しい映像になったり、実際のニュース映像やインタビューはもちろんイラストやアニメーションなど伝えたい事を伝わるように様々な表現をめちゃくちゃバランスよく用いて豊かに描いた作品でした。

構成も上手くて、問題が大きくなっていく様もロジカルで分かりやすくなってました。

過去の回想の時にイラストで見せたグレゴリーの胸の“傷”が、本当にあることをちゃんと終盤に実際にカメラに映っていたのも良かったですね。

グレゴリーがロシアの組織的ドーピングを告発すると覚悟を決めた後半からは、小説「1984」で主人公に行われる“治療”である「学習」「理解」「受容」の3段階になぞらえて話が進んでいくのも分かりやすかったですね。

 

後はやっぱ、グレゴリーというおっちゃんが作品としては運良くとてもチャーミングな人物で観る人を惹きつけるキャラだったのは大きいと思います。

そんなグレゴリーが容赦ない事態に巻き込まれていく様子は、下手なフィクションのサスペンスよりもよっぽどハラハラしますよ。

 

終わりに

ある意味でロシアに喧嘩を売るような内容のドキュメンタリー、このリスキーな題材はNetflixオリジナルだから作れたのかもしれませんね。

 

映画を観て面白い時間を過ごしながら、自分まで何かヤバいところに触れた気になる。

まさにドキュメンタリー作品ならではの楽しさではないでしょうか。

 

ショックだったのはドーピングというのがここまで蔓延していると知ったことですかね。

国家ぐるみで組織的にドーピングを行う仕組みが作られたロシアだけではなく、他の色々な国、あらゆる競技でドーピングが行われているんじゃないかとやっぱ疑ってしまいます。

どんな競技でもトップクラスの選手のなんなら半分以上はやってるんじゃないの?ぐらいね。

だって現状の薬物検査方法では検査をすり抜けることが出来てしまうんですからねえ、もちろん誰でも簡単に出来ることではないですけど、知識と情報があれば可能だということをこの映画は証明してますからね。

 

フォーゲル監督がレースに出た時に「他とはレベルが違う選手が少なくとも10人はいた」という言葉が意味深に聞こえます。

 

「二重思考」というのがキーワードとして出ました、この映画の本質的な恐ろしさというのは個人的にはこれからオリンピックなどの国際競技を見る時に「選手がドーピングをしてると分かっていながら、同時にドーピングなんてしていないとも信じる」という「二重思考」でスポーツを見ることになってしまうところじゃないですかね。

何をバカなと思うかもしれませんが、この映画み観た後では、どうしたって頭の片隅に浮かんでしまいますよね。

もちろん2020年東京オリンピックもありますからね、余計な事を気にしたくないということであれば、敢えてこの映画を観ないというのもアリだと思いますけどね。笑

 

でも安心して下さい、この日本でも「二重思考」なんて沢山ありますから、僕らはもうすでに気にならないぐらい慣れちゃってますよ、どうせ。

 

まあそんな硬い話は抜きにしても、単純にとても面白い作品なので観てみてはいかがでしょうか!

 

 

映画『ROMA/ローマ』アルフォンソ・キュアロン監督の原点にして集大成!ルーツを辿って見つけたのは新たな家族の形【第91回アカデミー賞】

『ROMA/ローマ』

 

第91回アカデミー賞(2019年)

 

★【監督賞】

★【撮影賞】

★【外国語映画賞】

 

引用:NETFLIX

 

監督:アルフォンソ・キュアロン

製作:ガブリエラ・ロドリゲス、アルフォンソ・キュアロン、ニコラス・セリス

製作総指揮:ジェフ・スコール、デヴィッド・リンド、ジョナサン・キング

脚本:アルフォンソ・キュアロン

撮影:アルフォンソ・キュアロン

美術:エウヘニオ・カバレロ

衣装:アンナ・テラサス

編集:アルフォンソ・キュアロン、アダム・ガフ

キャスト:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、マルコ・グラフ、ダニエラ・デメサ、カルロス・ペラルタ、ナンシー・ガルシア、ディエゴ・コルティナ・アウトレイ

 

 

これは良い映画でしたね〜。

ただ、アレなんですよね。

普段シネコン(イオンとかの商業施設の中にあるスクリーンが沢山あるタイプの映画館)で上映されてるような作品しか観ないという人にはちょっとアレかもしれないんですよ。

まあ言ってしまうと、地味なんですよ、この映画。

もうね、シネコンで上映されてるような娯楽作と比べると、とにかく地味なんですよ。

でもすごく良い映画!

とある一家とそこで働くお手伝いさんとの生活や関係性の変化を描いた作品です。

しかも画面はモノクロ(白黒映画)だし、ハリウッド映画のようなハッキリとした物語もなくて、まるでアート映画のような雰囲気すら漂わせる作品なんですよ。

しかも言語が英語じゃなて全編スペイン語に、場合によってはミシュテカ語という先住民の言葉です。

 

そして僕らからして有名なキャストは誰1人出ていません。

 

だからぱっと見は地味に見えるんだけど、実はその中にはとても映画的な豊かさと暖かい「まなざし」が詰まった作品で、観終わったらなぜか自然と感動しているんですよね。

しかし普段あまりこの手の映画を観ないような人がなんの予備知識も無しに観るよりは、この作品が「誰の、そしてどんな想いが込められて作られたものなのか」ぐらいは最低限知っておいた方が絶対に良いと思います。 

 

めんどいから、いきなり観てもいいかって?

 

もちろん、それでも全然良いと思います。

そこはやっぱ好きなように観て欲しいですから。

でもそれで、アカデミー賞で話題になったからとりあえずで観てみたけども「なんか退屈だった」「つまんね」で終わってしまったらもったいない作品だと思うんで出来ればこの記事を読んで見所をなんとなく掴んでから観賞して欲しいですね。

そこまで長くならないようになるべく紹介したいと思うんで、是非。

 

しょうがないな、って?

 

ありがとうございます!

 

 

 

あらすじのような概要

70年代初頭、政治的混乱に揺れるメキシコ・シティが舞台で、割と裕福そうな中産階級の家で住み込みの家政婦として働いているクレオという若い女性が主人公です。

朝早くから夜遅くまで家事や家の子供達の世話に追われる生活や、恋人のフェルミンとの束の間の楽しみと休息を、そして雇い主の一家との関係性の変化をモノクロームの向こうに鮮やかに描いていくんです。

 

しかし、文字で書いてみると、ほんと地味ですよね。

家政婦は毎日大変ですよ〜って、これだけの話ですからね。笑

 

でも、映像や音で丁寧に丁寧に描くと、これがちゃんと感情のこもった素晴らしい作品になるんだから映画ってやっぱすごいんですよ。

 

主な登場人物&キャスト

 ヤリッツァ・アパリシオ

引用:NETFLIX

劇中では田舎から出てきた住み込みの家政婦で先住民の若い女性クレオを演じています。

 

メキシコの女優さんでこの作品で女優デビューを果たし、なんと今まで演技経験のなかった彼女が初めての映画でアカデミー賞を始め様々な賞にノミネートされました。

先住民の両親を持ち、父親はミシュテカ、母親はトリケ族です。

 

●  マリーナ・デ・タビラ

引用:NETFLIX

劇中では家の主人である夫アントニオの妻ソフィアを演じています。

 メキシコの女優さんで、舞台の世界でキャリアを積み、メキシコ監督の映画にも出演しています。

この作品の演技が評価されるアカデミー賞の【助演女優賞】にもノミネートされ国際的な知名度を得ました。

 

●  フェルナンド・グレディアガ

引用:NETFLIX

 

劇中では男性的、父権的な家の主人アントニオを演じています。

 

 ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ

引用:NETFLIX

劇中ではクレオの恋人である無責任な男フェルミンを演じています。

ある意味、体を張った演技をします。

 

観る前に知っておくべきこと

 

監督について(重要)

とにかくこの映画、まずは監督のことを知るのが1番早いです。

じゃあそれで誰なのかと言うと、アルフォンソ・キュアロンという監督です。

代表作は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『トゥモロー・ワールド』、そしてなんと言っても『ゼロ・グラビティ』では第86回アカデミー賞に10部門ノミネートされ、その年の最多の7部門を受賞してますからね。

ちなみにその時にも【監督賞】を獲得してます。

つまり今や作品を作れば注目されるような映画監督なわけです。

 

それで、なぜこの映画を楽しむためにはアルフォンソ・キュアロン監督を知るのか1番早いかと言うと、この映画ってキュアロン監督もの凄く個人的な作品なんですよ!

具体的にはこの映画の舞台となる家や設定って、監督の子供時代のことなんですよ。

ちなみにどれぐらい個人的な作品かと言うと映画で出てくる内容の9割は事実とのことだからすごいですよね。笑

監督もインタビューなどで色々なところで言ってますが、「今までの作品とは違い、1番自由に作った」と言ってるぐらい監督個人の様々なものがダイレクトに投影されてるんです。

だから、この映画を知るには画面上での物語や展開などだけを見て追って考えるよりもキュアロン監督がどんな想いを込めて作った映画かを知るのが1番早いんじゃないかと思います。

 

家政婦はいた!

 

なんですか?

 

全然、タイトルのそれ、全然だよ、って?

 

いいじゃないですか、自分でも分かってますよ…ほんの出来心ですよ…!

 

えー、はい、無かったことにして進みます。

 

この主人公のクレオという家政婦さんは本当にいた人なんですよ。

実際にはリボリアという名前で、キュアロン監督が物心ついた頃からすでにその家で働いていて、ずっと身の回りの世話をしてくれていたんです。

家政婦とかお手伝いさんとか、今となってはなかなか馴染みはないんですけど、様々な理由で田舎から都会の少し裕福な家へ10代の女の子が住み込みで働きに出るというのは昔は割とよくある事だったようですね、それはメキシコだけじゃなく日本もです。

リボさんは子供達にとても愛情を込めて接してくれて、子供の頃のキュアロン監督も強い絆を持つことが出来たと言っています。

 

ちなみにこの映画の家政婦のクレオ"ヤリッツァ・アパリシオ"をキャスティングしたいくつかの理由の1つに「リボさんとルックスが似ていたから」というのがあるそうですよ。

 

冒頭クレオが床を掃除してる様子、気持ちまで下を向いている

引用:NETFLIX

 

メキシコの階層社会

 

この映画の中で出てくる家は、白人の家族とその世話をする先住民のお手伝いさん達が住んでいます。

白人の御主人様に使える先住民という、いわゆる階層がこの家の中にはあります。

そして、その階層の構図というのは1つの家の中だけの話じゃないんですよ、メキシコという国全体に階層社会として根付いてしまってるんです。

かつてメキシコの地で栄えていたアステカ帝国をスペインが滅ぼし、そこからメキシコは長い間スペインの植民地でした。

元々あった先住民の文化の上に、スペイン人が持ち込んだ白人文化を上塗りされて今につながるような独特なメキシコ文化になっていったわけですが、メキシコが独立した後も文化と共に当然のように社会的な階層も残ってしまったんですね。

とは言えこの映画はそういう問題が声高に描かれることは決してありません、なのに背景として浮かび上がってくるんですよ。

子供の頃のキュアロン監督の記憶と若かった頃のリボさん(クレオ)の記憶を丁寧に描いたら必然的に階層社会の当時の混乱した状態が浮かび上がってくる、だってそれが事実なのだから、その物言わぬ説得力がこの作品のすごいところです。

そしてそれはキュアロン監督がこの映画を作ろうと思った大きな理由にもなってるんです。

 

 

なぜ今この映画を作ったのか

 

という質問に対して、「歳だからかな」とインタビューで答えてたのにはちょっと笑いましたね。

まあ、つまりいつのまにやら歳も50を過ぎて映画監督としてそれなりのキャリアを積んできてふと立ち止まってみた時に自分は誰でどこから来たのか、あらためて自分自身と向き合うために自分を形作ったルーツを振り返るために作られた映画なんですよ。

そのルーツを辿って行き着いたのがキュアロン監督が子供の頃に住んでいたメキシコシティの家での生活だったんですね。

ちなみに『ROMA/ローマ』というタイトルですが、これはあのイタリアのローマではなく、キュアロン監督が子供の頃住んでいたメキシコシティのコロニア・ローマ地区のローマから名付けられています。

 

そのキュアロン監督が子供の頃のメキシコ、1960年代後半から70年代初頭のメキシコというのはすごく政治的に混乱してる時代なんですよ。

一党独裁とも言える状態が長く続いたことで民衆の不満が溜まった状態に経済格差の広がりやそこに目を向けさせないための人気取りとしてオリンピックワールドカップを開いたことで火が付いて政府と民衆が激しく対立してました。

その対立が極に達するのが1971年に起きた“コーパス・クリスティの虐殺”いわゆる「血の木曜日事件」で、僕はこの映画を観るまではメキシコでそんな事が起こっていたなんて知らなかったんですが、その日、政府への反対運動をしていた学生などが120人近く殺害された事件です。

この映画でも「血の木曜日事件」と思われる出来事を目の当たりにしてしまうというショッキングなシーンがあるのです。

 

ちなみにもう少し調べたら(はい、Wikipediaですけど?)1968年にも「トラテロルコ事件」と言われるこれまた軍や警察組織による学生や民間人への3、400人規模の大虐殺があったというから、ちょっとびっくりしましたね。

(しかも信じられない事にメキシコオリンピックが開会する約10日前に起きている…)

 

それぐらい社会が混乱していた時代のメキシコシティに暮らしていながら、また、キュアロン監督の家族も両親の離婚で崩壊しながらも、子供の頃の自分を何不自由なく支えてくれた2人の女性について自分のルーツを確認する中でキュアロン監督は思いが至っていきます。

母親と家政婦のリボさんですね。

キュアロン監督は色々な事を知り大人になった今振り返ると、「子供の頃はメキシコの階層社会や先住民のこと政治的なことなど全く何も知らずに無邪気に暮らしていた事、その無邪気な暮らしの土台には白人という守られた特権階級があった事など考えもしなかったんだ」とインタビューで言っています。

キュアロン監督は、子供の頃の自分には分からなかったけど、彼女たちにも母親として、家政婦としての顔以外に1人の女性として1人の人間としてあの時代を生きてきた辛さや葛藤があったはずだと考えたんですね。

だから、今は高齢となったリボさんに何度も何度も話を聞きに行き、何度も何度も自分の記憶もほじくり返し、何度も何度も自分と向き合う、その作業はとても大変でキュアロン監督はこの作品の脚本を書き上げるまでに2年以上かかったそうです。

 

そしてやがて映画を完成させるわけですが、自分とひたすら向き合うという苦行に投げ出す事なくやり遂げたその原動力の大きな1つは「罪悪感」だとキュアロン監督はインタビューで言ってるんですよね。

当時は無条件に愛情を注いでもらっていた立場、そして今となっては振り返って話を聞いて「知る」だけしかできない事への「罪悪感」。

 

この映画を観ると、その「罪悪感」が何かまるで立ち入り禁止のロープを張ってるかのような映像の独特な“距離感”、後になって「知る」ことは出来てもその当時に何かしてあげることは決してできないという部分。

そして一方では、大人になり映画作家として成功した自分が今してあげることの出来る最大限の敬意。

それらが入り混じった映画となってるんです。

 

モノクロなのに新しい、独特な世界

モノクロ映画というと、白と黒!という感じでコントラストが強調されたような画面を思い浮かべる人も多いかもしれないですが、この映画のモノクロというのはそういうのとはちょっと雰囲気が違うんです。

 

観た人なら分かると思いますが、画面の全てが凄く鮮明に映し出されてますよね!?

 

まずこの映画は65ミリフィルムのカメラで撮影されてるんですよ。

フィルムで撮影するにしてもそれより小さい35ミリフィルムが割と一般的なんだけと、それよりも大きな65ミリフィルムを敢えて選んでいます。

それは解像度の高さ、つまりすっごい高画質ってことですね。

だからほんとに細かな質感とかも潰れることなく映像に収められてます。

しかも被写界深度が深い、と言うのは手前にあるものや奥にあるもの全部にピントが合ってる状態で、つまり画面の隅々までバッキバキな映像ということです!

それなのにこの映画、モノクロ作品なのが面白いんですよね。

65ミリフィルムによって白と黒の間にあるグレー部分の色味のとにかく幅の多さが画面上にバキッと表現されてるんですよ。

ちなみにフィルム撮影にモノクロときたら昔風のクラシカルな印象ですが、実はCGや合成などデジタル技術を駆使して鬼のような調整の元に完成された映画なんです。

特に光に関しては、この映画にリアリティを与えてくれるパッと見本当に自然的としか言いようのない光も、「僕たちが普段見ているカラーの世界じゃないモノクロの世界なのにまるで自然に感じられる光」という調整にとても気を使っていて、デジタルで合成処理をしたり組み合わせたりしてます。

そうやって作り上げられたバチっと全てが鮮明なキュアロン監督のモノクロは、例えば第84回アカデミー賞作品賞に輝いた『アーティスト』の古典的な味わいのモノクロと、同じモノクロ映画でも方向性が全く違うというのも面白いんですよね。

どちらも作品のテーマと方向性がマッチしてますからね。

 

どこまでも鮮明な美しいモノクロ

引用:NETFLIX

なぜモノクロ映画なのか

なぜわざわざモノクロ映画にしたのかって?

 

確かに素朴な疑問を感じる人も多いですよね。

 

なんとなくオシャレそうだから?

 

いやいやそんな訳ないですよ。笑

 

ちゃんと、明確な理由があるんだけど、その前にあの独特なカメラワークについても触れておきたいですね。

この映画は登場人物をクローズアップで映すシーンはほとんどありません。

むしろ登場人物達から少し離れた、常に一定の距離を置いて撮影してるんですよ。

あと、カメラの動きですね、ほぼ人の目線と同じ高さで水平方向にしか動かないという非常に独特なカメラワークになってます

 

ここで最初の疑問に戻ります。

なぜモノクロ映画なのか。

なぜこの映画の画面内では登場人物から常に一定の距離を置いているのか。

なぜ、水平方向にしかカメラが動かないのか。

 

全部同じ理由なんですよ。

 

それはキュアロン監督の過去の思い出の世界だからです。

何も知らなかった子供時代とは違い大人になり色々な事を知り、自分のルーツを探る中でもまた色々な事を知る、そして自分を形作ってくれて人達の苦労に思いが至る。

しかし、知ることは出来ても結局は何もしてあげることが出来ない過去の世界。

つまり、ただ見ていることしか出来ない世界。

キュアロン監督から見る過去の光景を表現してるんです。

だからモノクロなんですよ、だから登場人物から常に一定の距離を置いてるんですよ、人の目線の高さの水平にしか動けないんですよ。

キュアロン監督自身も「幽霊みたいになって過去へ戻ったような感じ」とインタビュー言っています。

 

しかもキュアロン監督自身がカメラを撮影し、アカデミー賞の【撮影賞】まで受賞してるんですよね。

本当は監督の盟友でよくタッグを組むエマニュエル・ルベツキという撮影監督が今回も撮影を担当する予定ですだったのがどうしてもスケジュールが合わなくて参加できず、急遽キュアロン監督自身でカメラを回して撮影しすることになったんだけど、たまたまそうなったとは言え今回に関しては絶対にそれで良かったと思いますね。

まさにキュアロン監督が自分で本当に過去を覗いてるという構図がもたらす説得力、その目線の映像を僕らも味わうことができるのです。

 

そこが重要で、この作品はキュアロン監督がひたすら過去を見る、まなざしの映画と言えるんです。

 

この映画に込められたまなざし

この独特なカメラワークとモノクロの世界観は、過去をただ見ることしか出来ないキュアロン監督の目線と言いましたね。 

いくら過去の事を描くとはいえ映画ですよ、例えばもっと登場人物の内面や心情にフューチャーするような入り込むような作りだっていくらでも出来たのに敢えてそれはしないんですよ。

 

自分の過去ですよ、今の自分をかたち作ってくれたリボさんや、母親など、何か思わず手を差し伸べたくなるじゃないですか。

 

しかし、幽霊のようにただ見るだけしか出来ない自分という枷を設けて映画を作ってるんですよ、自分の過去、自分のルーツにどれだけ真摯に向き合ってるんだキュアロン監督は…!と思わずにはいられないです。

 これはこれで、人知れず辛い部分もあったと思います。

 

でもね、たとえ見るだけしか出来なくても、そのまなざしの変化で伝えれることもあるんです。

 

カメラは人物から距離を置いて水平にしか動かないと言いました。

でも実はこの映画の中で例外的に水平方向じゃなく上下の方向、または人物に寄るというショットが数回出てきます。

もちろん、その全てがキュアロン監督の過去を見つめる「まなざし」の変化にとって重要な意味があってやっていることです。

ちゃんと変化の節目節目でそういった例外的なショットが出てくるようになってるんですね。

 

例えば、上下方向で言えば、最初ですね、映画のオープニングは「下」を向いたショットから始まります。

主人公の家政婦のクレオが床のタイルを掃除していて、タイルに張られた水に反射して写った空に飛行機が飛んでくるところでROMAというタイトルが出てくるシーンです。

この映画って、順撮りで撮影されてるんですよ。

順撮りとは、物語の進行通りに順番撮影していくことです。

 

普通そうなんじゃないの、って?

 

そうでもなくて、順撮りの方が珍しいんですよ。

映画というのはキャストやスタッフのスケジュールや予算や日数など諸々の事情で撮れるシーンから効率よくまとめて撮影していくのが普通なんです。

つまり順番はバラバラなのが普通です。

だから、さあ今日から映画の撮影を始めますという時にいきなりクライマックスやラストシーンから撮影することも全然珍しくないんですよ!

 

でもこの映画は順番に撮影することに意味があって、要はキュアロン監督が自分の過去を振り返ったり、リボさんに色々な話を聞いたり、それによって自分のルーツが確かなものになっていく様子をこの映画では「まなざしの変化」という形で僕らも共有できるようになってるんです。

だから最初は下を向いたショットから始まるんです。

まだ何も知らない僕らにとっては床のタイルの犬のうんこを掃除するただの家政婦さんだから。

そしてその家政婦のクレオもどこかうつむいたような印象で、監督によればモデルになったリボさんも当時はよく下を向いていたそうです。

 

そして中盤ではクレオが恋人と過ごす時、ここでも距離を置いた水平方向ではなく例外的にカメラが顔に寄っています。

家政婦としての存在ではなく1人の女性としての顔を持つことを知る意味でも、彼女の顔にカメラが寄るということは重要なんです。

 

そして、クレオにとある悲劇が起こった後にも、座ってうつむく彼女の顔にカメラが寄っています。

あの頃、キュアロン監督含め子供達には見せていなかったクレオの痛みを知ることになる重要な場面です。

 

さらに終盤、車の後部座席に座るクレオの穏やかな表情にカメラが寄っています。

海で溺れそうになっている子供達をクレオが身を呈して助けた後です。

つまり波によって洗われた「ザ・洗礼」とも言えるシーンの後の表情です。

もうここまで観たのなら、この時クレオがどういう存在になったのか、監督のまなざしの変化のどういう節目の場面なのかは感じとれますよね。

 

そして最後、上下方向で言うところの上方向へ初めてカメラが動いていきます。

そこには洗濯物を手に階段を登るリボさんが映されています。

そして今度は本物の空に飛行機が飛んできたところでROMAというタイトルが出ます。

これは映画の1番最初と1番最後、つまり変化のスタートとゴールが完全に対となる構成になってるんです。

この映画を観終わる頃には、キュアロン監督のクレオ(の元になったリボさん)へのまなざしが下から上へと変化して過程をまるで自分のことのように感じれるんじゃないでしょうか。

 

「変化」とは下と上のあいだ、黒と白のあいだ、無知と理解のあいだ、そこでこそ起こるものなんじゃないでしょうか。

この映画は真っ二つにすることのできない「あいだ」を描いてますね。

 

そして、その過程を描き切るためにキュアロン監督はこれまで培ってきた映画の経験を大いに活用してるのです。

本作屈指の名シーン   引用:NETFLIX

キュアロン監督といえば

 

おそらくアルフォンソ・キュアロンといえば、『ゼロ・グラビティ』での宇宙を舞台とした徹底的に作り込まれた圧倒的な映像体験を覚えている人も多いと思います。

なので映像作家的なイメージを持っている人がも多いかもしれませんね。

確かにそうで、作品ごとに毎回盟友ルベツキ撮影監督と共に映像にこだわっていて観客に驚きを与えてくれます。

 

なので、前作、前々作と、映像的にトレードマークとなるようシーンが印象に残るSF映画だったので、この『ROMA/ローマ』は意表を突かれましたね。

 

ちなみに映像で1番の特徴は「長回し」と呼ばれる撮影方法で、カットを割らずにずーっと撮り続けるんですよ。

その間、観てる人の緊張感も持続すると一般的には言われています。

ちなみに複雑なシーンになればなるほどめちゃくちゃ「長回し」は大変です。

キュアロンは、その「長回し」を好んで取り入れる監督でもありますね。

 

あと、キュアロン監督のここ何作品か「水」というのがすごく大事な役割を果たしてますね。

「生と死」や「内面的な生まれ変わり」や「再生」を示すような場面、そこには必ず「水」に関係する何かがあります。

 

そしてキリスト教的なモチーフや背景を感じさせる演出や表現がどの作品にもありますね。

 

あと、女性が重要な役割を果たしているのも多くのキュアロン作品に共通するところです。

強い女性、無責任な男に振り回される女性、女性を通しての「死」と「再生」など、キュアロン作品には欠かせないテーマの1つとなっています。

 

そして、じゃあこの『ROMA/ローマ』はどうなのかという話なんですが。

 

原点であり集大成

これが面白くて、さっき言ったいくつかの主な要素はもちろん、それ以外の作品の要素も沢山入っていて、これでのキュアロン作品のほとんどの何かしらの要素が入ってるんじゃないか?と思ってしまうような最新作になっていたんですよ、この『ROMA/ローマ』という映画は。

 

この映画はキュアロン監督が自分のルーツを確かめるための作品だということは説明してきたと思いますが、子供時代の暮らしの中に今のキュアロン監督を特徴付けるいくつもの要素があったことが分かります。 

ああ、原点はここだったんだな、と。

 

中でも今のキュアロン監督につながる1番大きなきっかけは、劇中で家の子供達がクレオに連れて行ってもらって映画館に『宇宙からの脱出』というアメリカ映画を観に行くところですね。

キュアロン監督は当時この映画を観に連れて行ってもらったことで、自分も映画監督になりたいと思ったと言ってるんですよ。

つまりそれだけ取ってみても家政婦のリボさんがキュアロン監督に与えた影響の大きさが分かります。

しかもその時観た『宇宙からの脱出』という映画は、『ゼロ・グラビティ』の元ネタになっている映画なんです。

 

そして、身勝手な男に振り回されたり傷付けられながらも立ち直り再起を果たす「強い女性」という特徴も、劇中のクレオと母親という2人の女性の姿を見ていたら後にキュアロン監督の様々な作品に登場する女性像に影響を与えてることも分かります。

 

「水」によって表現される「生と死」、からの「再生」は、あの終盤の浜辺での体験を見れば明らかですよね。

 

キュアロン監督の美しい映像はなぜ美しいのか、それは美しい出来事が収められているからこその映像だから。

 

こんな感じでね、キュアロン監督が過去の子供時代を振り返り「自分」というものを確認していくと、映画作家としての原点が詰まっていたんです。

 

その原点と現在の自分とのつながりを映画という1つの作品として表現したら、ちゃんと場面ごとに必要性を持って使われる「長回し」や、キリスト教的なモチーフや演出がそのまま重なる出来事の数々、登場人物たちの設定や葛藤など、結果的にはキュアロン監督の今まで映画でやってきたことの集大成と言える作品になったことが、この映画を特別な1本にしている部分だと思います。

 

おわりに

 

長くならないように紹介すると言ったのは何だったのか、というぐらい普通に長くなりましたね。 笑

 

それだけ中身の濃い映画だったということです!

 

この映画の最後に「リボへ」と、文字が出てきます。

大人になったアルフォンソ・キュアロンからの最大限の敬意と愛が込められた作品だと思います。

タイトルの『ROMA/ローマ』、原題はそのままの『ROMA』ですが、おそらく、それは住んでいた場所のコロニア・ローマ地区からきているだけじゃないと思うんですよ。

ROMAは逆から読むとAmor/アモール「愛」という言葉になり、この映画を観た人なら単なる男女の愛という以上にとても大きな意味の「愛」が描かれている作品なのは分かりますよね。

そして、ROMAという一言の言葉が持つ、語感と言ったらいいのかなんというか、リボさんに向けて「あなたは私達の家族であり、あの頃のROMAは共通の我が家(ホーム)」みたいなニュアンスも感じて、とてもしっくりくるタイトルだと思います。

 

どうでしょうか、こうやってアルフォンソ・キュアロン監督自身のことや込めた想いを紐解いていくことが、そのままこの『ROMA/ローマ』という映画を理解する1番の近道というのが分かってもらえたかと思います。

それぐらい監督の個人的な映画、その個人的な想いに対して本当に真摯に作られていたならば、その中心となる大事な部分は監督と思い出を共有していないはずの僕ら観客にも不思議と国境や人種を超えて必ず伝わってくるものがるんですよ。

それは凄いことですよね。

 

こういうタイプの映画もあって、そういうパーソナルな映画でしか辿り着けない鑑賞後の余韻、つまり楽しさというのもある。

これは普通の娯楽作品の瞬間的な楽しさとは全く違うタイプの感覚です。

そしてその余韻や楽しさを味わうためには、ある程度観る人の前のめりな姿勢が必要だということ、向こうからやって来ることは無いんです、まさに自分から辿り着いていくようなつもりで映画鑑賞するときっと味わえるんじゃないかと思います。

 

まあ、そんな感じのことを収穫にしてもらえれば幸いですね。

 

 

あと、観た人の誰もが印象に残る棒を振り回しながら棒が振り回されるという男性的マチズモが滑稽に描かれた名シーンもあるんで、楽しんで下さい。笑

 

 

あと、Netflix配信作品なので、Netflixに契約してる人は誰でも今すぐ観ることができますよ!

 

ただ、注意点として、元々この映画では外国語で地味でモノクロということで劇場上映だとアメリカでは上映してくれる劇場が少ないだろうと考えて、より多くの人に観てもらえる環境を求めてNetflix配信という形にしたみたいです。

しかし、皮肉なことに映画館でとても似合う作品になってて、Netflixで観た後にアカデミー賞のタイミングで日本でもラッキーな事にちらほら劇場公開をしていたので観賞したんだけど、映画館で観る『ROMA/ローマ』はめちゃくちゃ良いです。

だからNetflixとはいえ、なるべく集中できる環境で観た方が良いと思います。

あと、モノクロなので部屋は絶対に暗くした方が良いです!

 

 


『ローマ』予告編|Roma - Trailer HD

 

 

第91回アカデミー賞(2019)全受賞作品&ノミネート作品一覧

※ 青文字をタッチするとその映画の紹介記事に飛べます

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★作品賞★

【受賞】「グリーンブック」

〜以下ノミネート〜

「ブラックパンサー」

「ブラック・クランズマン」

「ボヘミアン・ラプソディ」

「女王陛下のお気に入り」

「ROMA  ローマ」

「アリー   スター誕生」

「バイス」

 

★監督賞★

【受賞】アルフォンソ・キュアロン

「ROMA  ローマ」

〜以下ノミネート〜

スパイク・リー

「ブラック・クランズマン」

パベウ・パブリコフスキ

「COLD WAR   あの歌、2つの心」

ヨルゴス・ランティモス

「女王陛下のお気に入り」

アダム・マッケイ

「バイス」

 

★主演男優賞★

【受賞】ラミ・マレック

「ボヘミアン・ラプソディ」

〜以下ノミネート〜

クリスチャン・ベール

「バイス」

ブラッドリー・クーパー

「アリー  スター誕生」

ウィレム・デフォー

「永遠の門   ゴッホの見た未来」

ヴィゴ・モーテンセン

「グリーンブック」

 

★主演女優賞★

【受賞】オリビア・コールマン

「女王陛下のお気に入り」

〜以下ノミネート〜

ヤリッツァ・アパリオ

「ROMA  ローマ」

グレン・クローズ

「天才作家の妻  40年目の真実」

オリビア・コールマン

「女王陛下のお気に入り」

レディー・ガガ

「アリー  スター誕生」

メリッサ・マッカーシー

「ある女流作家の罪と罰」

 

★助演男優賞★

【受賞】マハーシャラ・アリ

「グリーンブック」

〜以下ノミネート〜

アダム・ドライバー

「ブラック・クランズマン」

サム・エリオット

「アリー  スター誕生」

リチャード・E・グラント

「ある女流作家の罪と罰」

サム・ロックウェル

「バイス」

 

★助演女優賞★

【受賞】レジーナ・キング

「ビール・ストリートの恋人たち」

〜以下ノミネート〜

エイミー・アダムス

「バイス」

マリーナ・デ・ダビラ

「ROMA  ローマ」

エマ・ストーン

「女王陛下のお気に入り」

レイチェル・ワイズ

「女王陛下のお気に入り」

 

★脚本賞★

【受賞】「グリーンブック」

ニック・バレロンガ 、ブライアン・カリー 、ピーター・ファレリー

〜以下ノミネート〜

「女王陛下のお気に入り」

デボラ・デイビス 、トニー・マクナマラ

「魂のゆくえ」

ポール・シュレイダー

「ROMA  ローマ」

アルフォンソ・キュアロン

「バイス」

アダム・マッケイ 

 

★脚色賞★

【受賞】「ブラック・クランズマン」

チャーリー・ワクテル 、デビッド・ラビノウィッツ 、ケビン・ウィルモット 、スパイク・リー

〜以下ノミネート〜

「バスターのバラード」

ジョエル・コーエン 、イーサン・コーエン

「ある女流作家の罪と罰」

ニコール・ホロフセナー 、ジェフ・ウィッティ

「ビール・ストリートの恋人たち」

バリー・ジェンキンス

「アリー  スター誕生」

エリック・ロス 、ブラッドリー・クーパー 、ウィル・フェッターズ

 

★撮影賞★

【受賞】「ROMA  ローマ」

アルフォンソ・キュアロン

〜以下ノミネート〜

「COLD WAR  あの歌、2つの心」

ウカシュ・ジャル

「女王陛下のお気に入り」

ロビー・ライアン

「Never Look Away」

ケイレブ・デシャネル

「アリー  スター誕生」

マシュー・リバティーク

 

★編集賞★

【受賞】「ボヘミアン・ラプソディ」

〜以下ノミネート〜

「ブラック・クランズマン」

「女王陛下のお気に入り」

「グリーンブック」

「バイス」

 

★美術賞★

【受賞】「ブラックパンサー」

〜以下ノミネート〜

「女王陛下のお気に入り」

「ファースト・マン」

「メリー・ポピンズ  リターンズ」

「ROMA  ローマ」

 

★衣装デザイン賞★

【受賞】「ブラックパンサー」

ルース・カーター

〜以下ノミネート〜

「バスターのバラード」

メアリー・ゾフレス

「女王陛下のお気に入り」

サンディ・パウエル

「メリー・ポピンズ  リターンズ」

サンディ・パウエル

「ふたりの女王  メアリーとエリザベス」

アレクサンドラ・バーン

 

★メイキャップ&ヘアデザイン賞★

【受賞】「バイス」

〜以下ノミネート〜

「ボーダー  二つの世界」

「ふたりの女王  メアリーとエリザベス」

 

★視覚効果賞★

【受賞】「ファースト・マン」

〜以下ノミネート〜

「アベンジャーズ  インフィニティー・フォー」

「プーと大人になった僕」

「レディ・プレイヤー1」

「ハン・ソロ  スター・ウォーズ・ストーリー」

 

★録音賞★

【受賞】「ボヘミアン・ラプソディ」

〜以下ノミネート〜

「ボヘミアン・ラプソディ」

「ブラックパンサー」

「ファースト・マン」

「ROMA  ローマ」

「アリー  スター誕生」

 

★音響編集賞★

【受賞】「ボヘミアン・ラプソディ」

〜以下ノミネート〜

「ブラックパンサー」

「ファースト・マン」

「クワイエット・プレイス」

「ROMA  ローマ」

 

★作曲賞★

【受賞】「ブラックパンサー」

ルドウィグ・ゴランソン

〜以下ノミネート〜

「ブラック・クランズマン」

テレンズ・ブランチャード

「ビール・ストリートの恋人たち」

ニコラス・ブリテル

「犬ヶ島」

アレクサンドル・デスプラ

「メリー・ポピンズ  リターンズ」

マーク・シェイマン

 

★主題歌賞★

【受賞】“Shallow”

「アリー  スター誕生」

〜以下ノミネート〜

“All the Star”

「ブラックパンサー」

“I'll  Fight”

「RBG 最強の85才」

“The Place Where Lost Things Go”

「メリー・ポピンズ  リターンズ」

“When a Cowboy Trades His Spurs for Wings”

「バスターのバラード」

 

★長編アニメーション映画賞★

【受賞】「スパイダーマン  スパイダーバース」

〜以下ノミネート〜 

「インクレディブル・ファミリー」

「犬ヶ島」

「未来のミライ」

「シュガー・ラッシュ  オンライン」

 

★外国語映画賞★

【受賞】「ROMA  ローマ」(メキシコ)

〜以下ノミネート〜

「存在のない子供たち」

(レバノン)

「COLD WAR あの歌、2つの心」

(ポーランド)

「Never  Look Away(原題)」

(ドイツ)

「万引き家族」

(日本)

 

★長編ドキュメンタリー映画賞★

【受賞】「フリーソロ(仮題)」

〜以下ノミネート〜

「Hale County This Morning, This Evening(原題)」

「Minding the Gap(原題)」

「父から息子へ  戦火の国より」

「RBG  最強の85才」

 

★短編映画賞★

【受賞】「Skin」

〜以下ノミネート〜

「Detainment(原題)」

「野獣」

「マルグリット」

「Mother(原題)」

 

★短編ドキュメンタリー映画賞★

【受賞】「ピリオド  羽ばたく女性たち」

〜以下ノミネート〜

「Black Sheep(原題)」

「エンド・ゲーム  最期のあり方」

「Lifeboat(原題)」

「A Night at the Garden(原題)」

 

★短編アニメーション映画賞★

【受賞】「Bao」

〜以下ノミネート〜

「Animal Behaviour(原題)」

「Late Afternoon(原題)」

「One Small step(原題)」

「Weekends(原題)」

 

 

 

 

〜以上24部門 

 

トピック

 

2019年2月24日、カリフォルニア州ロサンゼルスハリウッドにあるドルビー・シアターで授賞式が行われた。

この年のアカデミー賞授賞式の大きな特徴として、司会者が不在で授賞式が行われた。

その理由は、本来は司会を務めるはずだったケヴィン・ハートの過去の発言に同性愛者を差別するようなものがあったことが明らかになり、司会を降板することが発表された。

代わりに、過去に司会を務めたことがある人達をあたってみるも、もう1度司会をすることに誰も興味を示さなかったため、結局は司会者不在のまま授賞式が行われることになった。

これは1989年の第61回アカデミー賞以来、30年ぶりのことである。

 

そしてもう1つの特徴として、時代の流れを受けて変化と迷いが表れたアカデミー賞となった。

アルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』Netflixの配信(ストリーミング)作品として初めて【作品賞】にノミネートされたことにある、つまり映画館で上映しない作品がアカデミー賞の【作品賞】を獲る可能性があったということだ。

とはいえアカデミー賞のルールとして「ロサンゼルス郡内で7日以上、1日当たり3回以上の有料上映」という決まりがあるため、厳密には『ROMA/ローマ』も部分的に映画館で上映をしてアカデミー賞に出品している。

逆を言えば、そのルールさえクリアすれば動画配信(ストリーミング)用に作られた映画もこれからはアカデミー賞に出品されるケースが増えるということで、スティーヴン・スピルバーグ監督を始めハリウッドでも「映画は映画館で観てこそ、Netflixなどの配信用の作品はアカデミー賞のオスカーの対象からは外すべき」という意見もあった。

現にカンヌ国際映画祭は配信用作品は一切扱わないという姿勢を示している。

その点、賛否が分かれつつもオスカーの対象にまで受け入れるというハリウッドらしい寛容な姿勢を感じながらも、肝心の作品賞は昔ながらの王道なアカデミー賞らしいと言ってもいい『グリーン・ブック』が受賞するなど、変革への思いとそれでもまだ躊躇してしまう迷いが混ざった第91回アカデミー賞だった。

しかし、【作品賞】は逃したが『ROMA/ローマ』Netflix作品でありながら【監督賞】【撮影賞】【外国語映画賞】を受賞し、変化への節目となるアカデミー賞となった。

 

 

 

映画『ダンケルク』さあ、1番大きいテレビの部屋でヘッドフォンを付けたなら、あとはノーランの集大成を体験しに行こう!【第90回アカデミー賞】

 

『ダンケルク』

 

第90回アカデミー賞(2018)

 

★【編集賞】

★【録音賞】

★【音響編集賞】

 

© 2018 Warner Bros. Japan

 

監督:クリストファー・ノーラン

製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン

製作総指揮:ジェイク・マイヤーズ

脚本:クリストファー・ノーラン

撮影:ホイテ・バン・ホイテマ

美術:ネイサン・クロウリー

衣装:ジェフリー・ガーランド

編集:リー・スミス

音楽:ハンス・ジマー

視覚効果監修:アンドリュー・ジャクソン

キャスト:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、バリー・コーガン、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、マーク・ライランス、トム・ハーディー、マイケル・ケイン

 

 

いつも読んでくれて、どうもダンケ

ドイツ語で「ありがとう」という意味ですが、まあ映画と何も関係ないですけどね。

 

ダンケルク!この響きだけで僕なんかはカッコいいと思ってしまうんですが、このダンケルクってのはフランスにある都市の名前で、そこを舞台に第二次世界大戦の時に繰り広げられた本当にあった出来事「ダンケルクの戦い」を描いた戦争映画がこの作品です。

 

戦争映画ってなんか身構えちゃうって?

 

たしかに戦場で人がたくさん死ぬから過激なバイオレンス描写があるし、歴史を知ってないと難しそうなイメージがありますよね。

 

しかし、そういう人にこそおすすめしたいのがこの『ダンケルク』なんです!

実はこれ、戦争映画なのにさっき言ったような要素はほとんど無いんです。

 

なぜならこれは「撤退戦」なんですよ。

つまり敵を殺すために向かって行くのではなく、生き残る為に敵から逃げる戦いなんです。

 

生き残る為のサバイバルを、観客それぞれがまるで当時の兵隊の1人となって体験するような映画になっているんです。

 

絶対に生き残ってやる!でも生き残るって本当に大変!次から次へと迫り来る「死というゲームオーバー」に知恵と五感を研ぎ澄ませて、時には運さえも頼りにして生き残ろうとする姿にいつのまにか自分もそこに居る気にさせられ手に汗握る!

そんな映画がこの『ダンケルク』なんですよ。

なのでこれから、この戦場サバイバル体験映画『ダンケルク』の魅力を紹介できたらと思います。

  


映画『ダンケルク』予告1【HD】2017年9月9日(土)公開

 

 

あらすじプラス

1940年の第二次世界大戦の初期にイギリス・フランスを始めとする連合軍は破竹の勢いでフランスに侵攻してくるドイツ軍にダンケルクの海岸で完全に包囲されてしまうんですよ。

あら大変!海を渡って逃げないと、でも船も足りない、うわ、どうしよう…。 

だってこっちは40万人いるんですけどー!ちょっと無理じゃないこれ?

という状況から始まります。

 

それでこの映画は「陸」「海」「空」3つのパート、3つの視点から描かれるんですね。

それでまず「陸」のパート1週間の出来事として描かれます。映画の冒頭で英国陸軍2等兵のつまり1番下っ端のトミーが自分が所属する班でダンケルクの街の中でドイツ兵の銃撃に合って自分以外全滅してしまうとこから映画が始まるんですよ。

それでとにかく浜辺まで逃げたら何十万の兵士がズラーッと列を作って待ってるわけですよ、戦場から脱出するための船を順番に。 

ちぇっ、こんなの俺最後尾で助かるわけないじゃんという事で1人ふてくされて急にその辺で野OOを始める(いや本当ですよ!)んですが、同じような境遇なのか1人でいるギブソンに用を足すところを目撃されたトミー「もう私お嫁に行けない、責任取って!」と言って(これは嘘です)2人で知恵を絞って協力してなんとか船に乗ろうとして行動します。

 

一方で「海」のパート1日の出来事として描かれます。イギリスのとある港に場面が移ります。

ダンケルクに留まっている兵士を救出するために国から民間船徴用の命を受けたドーソンは息子のピーターダンケルクへと向かいます。

その時にピーターの友達のジョージも船に乗り込んで一緒についてきます。

 

そして「空」のパート1時間の出来事として描かれます。英国空軍パイロットのファリアコリンズを始めとする小隊が撤退戦を邪魔しようとしてくるドイツ空軍機を相手に戦います。

 

はたしてダンケルクで救助を待つトミーは生き残れるのか?

 

「陸」「空」「海」の3つの視点は何を描くのか?

 

結末が分かっている史実をどういう終わり方で締めくくるのか?

 

その辺を注目して観ると楽しめると思います。

有名な史実なんでネタバレも何もないと思いますが、いつものように映画としての直接的なネタバレはできるだけ避けて紹介しますね。

 

 主要登場人物キャスト

 

●  フィン・ホワイトヘッド 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「陸」のパート、映画を観る人が1番感情移入しやすい主人公的な存在の英国陸軍二等兵のトミーを演じています。

 

ロンドンのリッチモンドで生まれた英国の俳優さんです。

2016年にITVミニシリーズ(テレビドラマみたいなもんですね)のHIMでの超能力に目覚める青年の役でデビュー。

今作『ダンケルク』のオーディションに見事合格し映画デビューを果たしました。

 

 

●  トム・グリン=カーニー 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「海」の パート、ミスター・ドーソンの息子のカーニーを演じています。

 

英国の俳優さんで、2017年にサム・メンデス監督の舞台劇『The Ferrman』に出演し高く評価されます。

同年この『ダンケルク』で映画デビューを果たします。

 

 

●  ジャック・ロウデン

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「空」のパート、英国空軍のスピットファイアのパイロットであるコリンズを演じています。

 

イギリス生まれスコットランド育ちの俳優さんです。

BBCのテレビドラマ『戦争と平和』、あと映画だと『否定と肯定』に出演してますね。

 

 

●  トム・ハーディー

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「空」のパート、英国陸軍のスピットファイアのパイロットであるファリアを演じています。

 

2001年に『ブラックホーク・ダウン』でハリウッドデビューします。

映画や舞台など精力的に活動して2010年の『インセプション』で一気に知名度が上がって、僕もこの俳優さんを知ったのはこのときですね。

その後は、『ダークナイト・ライジング』『オン・ザ・ハイウェイ  その夜、86分』『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』などで一気に有名俳優になっていきます。

 

出ました、トムハ!

ロンドン出身の俳優さんで、近年とても活躍してますね。

ノーラン監督作品にも多く出演していて、まあもはや常連組の1人と言っていいんじゃないでしょうか。

 

 

●  ハリー・スタイルズ

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「陸」のパート、英国陸軍「高地連隊」の二等兵のアレックスを演じています。

 

イングランド生まれの俳優さんです。

というよりは「ワン・ダイレクション」の1人としての世界的な音楽活動の方が有名ですね。

 今作が俳優デビューとして話題になりましたが、けして話題先行じゃなくてしっかりと作品に馴染んで演じてましたね。

 

 

●  アナイリン・バーナード 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「陸」のパート、トミーと行動を共にする無口な兵士のギブソンを演じています。

 

イギリス・ウェールズ出身の俳優さんです。

2003年、ドラマ『Jacob's Ladder』でデビューして、英国ウェールズ音楽演劇大学を卒業後、2009年ミュージカル『春のめざめ』と2012年映画『シタデル CITADEL』でそれぞれのコンテストや映画祭などで主演男優賞を取っています。

あとBBCドラマの『戦争と平和』にも出演してますね。

 

 

●  バリー・コーガン

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「海」のパート、ミスター・ドーソンに同行する青年のジョージを演じています。

 

アイルランド・ダブリンで生まれた俳優さんです。

2011年に映画『Between the Canals』でデビューします。

その後アイルランドのテレビドラマ『Love/Hate』の猫殺しのウェインなど、悪役のキャリアが多いようですね。

今作『ダンケルク』と同じ年に公開されたイギリス・アイルランド映画でヨルゴス・ランティモス監督の『聖なる鹿殺し  キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』でのマーティン役がめちゃくちゃ印象に残ってますね。

 

 

●  ケネス・ブラナー

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「陸」のパート、防波堤で撤退作戦の指揮を執るボルトン海軍中佐を演じています。

 

イングランド・レディング出身(北アイルランドから9歳の時に家族と移住)の俳優さんで、多数の映画や舞台に出演するベテラン俳優さんです。

RADA(王立演劇学校)を主席で卒業したあと舞台からキャリアをスタートさせ活躍します。

映画では1989年の『ヘンリー五世』でアカデミー賞の監督賞と主演男優賞にノミネートされました。

あと『マリリン7日間の恋』にも出演してアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされてましたね。 

俳優もやりながら、監督業にも精を出していて近場では『オリエント急行殺人事件』が話題になりました。

 

 

●  マーク・ライランス

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「海」のパート、民間の小型船の船長でピーターの父親のミスター・ドーソンを演じています。

 

イギリスのケント州アシュフォード出身の俳優さんです。

ロンドンの王立演劇学校(RADA)を卒業後は舞台俳優として活躍し、シェイクスピア・グローブ座の芸術監督も務めています。

映画では1996年『ベヤンメンタ学院』でデビューし、2016年のスピルバーグ監督『ブリッジ・オブ・スパイ』ではアカデミー賞の助演男優賞を受賞し注目を集めます。

その後は『BFG : ビッグ・フレンド・ジャイアント』の巨人や、『レディ・プレイヤー・ワン』などにも出演してますね。

 

 

●  キリアン・マーフィー 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

劇中では「海」のパート、ミスター・ドーソンに救出された謎の英国兵を演じています。

 

アイルランド出身の俳優さんです。

1996年にアイルランドのコークを拠点にする劇団でエンダ・ウォルシュ作の舞台『Disco Pigs』で主役を演じます。

その『Disco Pigs』の映画版(2001年)にも主役で出演して、それを観たダニー・ボイル監督の目に留まり『28日後…』の主演に抜擢されて一気に注目されます。

その後は『バットマン・ビギンズ』『ダークナイト』『インセプション』『ダークナイト・ライジング』などノーラン監督作の常連組と言ってもいいですね。

 

見どころを紹介!

 

 


映画『ダンケルク』予告2【HD】2017年9月9日(土)公開

 

まず「ダンケルクの戦い」って?

 

まず「ダンケルク」とはフランスの本土最北端にある海に面した湾岸都市です。

ドーバー海峡を挟んだ数十キロの海の向こう側にはイギリス、そんな地理関係の場所なんですね。

時は第二次世界大戦の時代、1939年9月にドイツがポーランドに侵攻します。

とうとうやりやがったなと、ドイツに隣接するフランスはイギリスと共にドイツに宣戦布告をします。

しかしいざ戦争が始まってみると「奇妙な戦争」とも呼ばれ、実に半年以上双方の間でほとんど戦闘が行われなかったんですが、1940年5月10日に突如オランダ、ベルギー、ルクセンブルクといういわゆるベネルスク三国(フランスの北部とドイツとの間にある面積の狭い3つの国の総称)に一気に侵攻を始めたんです。

フランス・イギリス連合軍は主力を北部のベルギー方面に進出させます、そしてフランス南部の直接ドイツと隣接する部分ではマジノ要塞と呼ばれる長大な要塞線を挟んでにらみ合いの状態です。

しかし実はドイツ軍は、フランス・イギリス連合軍の主力が進出した北方方面のベネルスク三国と南のマジノ要塞の間にあるアルデンヌの森とよばれる防御が薄くなってる場所に戦車部隊を進ませてたんです!

このドイツの奇襲作戦によってフランスの防衛線は崩壊し、あとは雪崩のようにドイツ軍がフランス北部へ侵攻しフランス・イギリス連合軍を包囲するような展開になっていくんですね。

そしてベルギー方面から撤退をしたフランス・イギリス連合軍も、とうとう逃げ場がなくなり追い詰められたのが「ダンケルク」という海の都市というわけなんです。

 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.   

こんな状況から映画が始まるんです

 

ここまではOKですかね。

 

なんか絵に描いたような奇襲の成功だ、って?

 

そうなんですよね!フランス側の読みの甘さと、あとこの時期のドイツはなんか士気も兵器もみなぎってる時期なんで勢いがすごいんですよ。

あとフランスも、もっと昔は人口が凄い多かったんですけどナポレオン時代に若い男をとにかく大量に徴兵して圧倒的兵力で戦争しまくったツケがこの頃に回ってきたことにより、第二次世界大戦当時のフランスの人口が著しく少なくなっていて兵員を増やしたくても増やせなかったって事情もあるんですよ。

戦争のツケを結局戦争で払う事になるとは、う〜ん、なんとも。

 

 

まあそんなこんなで、ここからが「ダンケルクの戦い」の始まりで、当然イギリスにもその知らせは伝わっていて包囲されている連合軍の兵士達を救出したいけどなかなか手立てがない。 

そんな時にイギリス海軍中将バートラム・ラムゼイが、軍の輸送船や駆逐艦だけじゃなく民間の船を小型船でも何もでもありったけを総動員してドーバー海峡を渡ってダンケルクまで40万人を救出に行くという作戦を計画して当時のイギリス首相のウィンストン・チャーチルに説明します。

その説明した場所が海軍指揮所のダイナモ(発電機)・ルームだったことからダンケルク撤退戦は「ダイナモ作戦」とも呼ばれています。

 

ちなみに第90回アカデミー賞ゲイリー・オールドマンが特殊メイクでチャーチルを演じて【主演男優賞】を受賞した『ウィンストン・チャーチル  ヒトラーから世界を救った男』ではその辺の裏側を描いてましたね。

 

そして結果的にドイツ軍に包囲されたダンケルクから33万8000人をイギリスに撤退させることに成功した、おそらく世界史的にもあまり類を見ない史上最大の撤退戦なんです

 

そしてダンケルクという危険な戦場に勇敢にも兵士を救出に行った800隻とも900隻とも言われる名もなき小さな民間船の勇気を「ダンケルク・スピリット」なんて言い方をして称えたそうです。

そしてこの「ダンケルク・スピリット」はイギリスが苦境に立った時にそれを皆で団結して乗り越えようというスローガンとして使われ、その精神は今だに残っているみたいなんですね。

 

 

ちなみにあの林修先生が「ダンケルク」の当時の状況について分かりやすく解説してくれています!

僕の文章を読まなくてもこれで十分です


林修先生が解説!3分で分かる映画『ダンケルク』【HD】2017年9月9日(土)公開

 

戦争映画というジャンル

一括りに戦争映画と言っても、その中にも色んなタイプがあります。

戦場の兵士から国の指導者まで多角的に全体像を描くようなものから、戦場に駆り出される兵士の過酷さ悲惨さを描くようなもの、更には戦争に巻き込まれた一般市民を描くもの、それぞれのタイプの戦争映画に意味があり映画としての楽しみ方があるんですよね。

 

あと個人的には戦争映画は割と好きなんですが、その理由ってなんだろう?とこれを書いてて思ったのは、戦争映画って監督の力量が色々と試されるジャンルだと思うんです。

 

それなりにキャリアを積んだ監督が挑戦するジャンルという側面があって、巨匠と呼ばれる監督達もこのジャンルを通ってきているイメージがありますね。

 

まず、単純にエキストラの人数やスタッフも多く準備や撮影の規模が大きい(例外もありますが)ので、良い作品にするにはそれらをまとめ上げる腕力が必要です。

そして、その監督が戦争というものに対してどう考え、どう捉えているのかを作品を通して示さなければいけまけんよね。

それは、時には世間にジャッジされることにもなります。

 

あともう1つ、個人的にはこれが大きいのかと思うんですけど、映画監督の作家性(個性)がとても出やすいジャンルだと思うんです!

新し目なところだとメル・ギブソン監督の『ハクソー・リッジ』、マーク・ウォールバーグ監督の『ローン・サバイバー』、デヴィッド・エアー監督の『フューリー』、タランティーノ監督の『イングロリ・バスターズ』、イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』『父親たちの星条旗』、少し昔だともちろんスピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』、オリバー・ストーン監督の『プラトゥーン』、キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』、コッポラ監督の『地獄の黙示録』、ペキンパー監督の『戦争のはらわた』、アルトマン監督の『M★A★S★H』など、パッと出るだけでもこれら全ての作品が個人的には監督の作家性(個性)が相当色濃く出てると思ってます。

 しかも、それぞれの監督の作家性と戦争映画のタイプがちゃんと一致してるから、どの作品も面白いんですよね。

 

それじゃあこの『ダンケルク』はどうかと言うと、これもまさに監督の作家性(個性)がとても色濃く出た戦争映画になってたと思います。

 

監督は誰なの、って?

 

はい、それは、クリストファー・ノーランという監督です。

 

 監督クリストファー・ノーランの作家性

 

●  そのキャリア

 

おそらくこのクリストファー・ノーランという名前は映画ファンじゃなくても1回ぐらいは聞いたことあるんじゃないですかね。

今やそのぐらい有名で、映画界の中では名前だけで客を呼べる数少ない監督の1人だと思います。

 

イギリス出身の映画監督で、父親はイギリス人で母親はアメリカ人なのでイギリスとアメリカ両方の国籍を持ってます。

子供の頃はロンドンとシカゴの両方で過ごしてたみたいで、羨ましいですねえ〜。

 

僕ですか?

 

寝ても覚めても島根県の田舎でしたよ。

 

その後ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンに入学したノーラン監督は小説を学びながら短編映画の制作を始めるんです。

 

1988年に『フォロウィング』で長編映画の監督デビューを果たし、次の『メメント』で注目を集めることになります。

ちなみに『メメント』の脚本は弟のジョナサン・ノーランが書いた短編が基になってるんですよ。

いやあ多才な兄弟ですね!

 

そして『バットマン』シリーズのリメイクの監督に抜擢されます。

その1作目である『バットマン  ビギンズ』は期待値を上回るほどの興行成績をおさめることが出来なかったんだけど、2作目で世界にガツンとかますわけですよ!

 

ダークナイトでしょ、って?

 

そうです!『バットマン』シリーズの2作目である、2008年公開『ダークナイト』の大成功で一気に世界的な知名度の監督になるんです。

なにせ、これまでの『バットマン』シリーズ最大のヒットに加えて最終的には全米興行収入歴代2位!世界興行収入歴代4位!という記録をアメコミ原作映画で達成したんです!

 

まあ公開当時の記録なんだけどなぁ、それよぉ(誰?急に)

 

ノーラン監督は、『バットマン』というスーパーヒーローの世界を徹底的にリアルにそしてシリアスに、正義と悪について考えさせられるような暗いバットマンシリーズを作り上げます。

このバットマンシリーズの成功を受けてDC(バットマンやスーパーマンなど諸々のスーパーヒーローの原作の出版社)原作の映画は、そこからいわゆるダーク路線に向かうわけなんですね。

 

その後は『インセプション』『ダークナイト ライジング』『インター・ステラー』など、監督した作品は公開時にはどれも話題になったんで観たことある人も多いと思います。

 

クリストファー・ノーランとはこんな人です。

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 

●  本物主義

 

さて、それでクリストファー・ノーラン監督作家性ということなんですが、真っ先に出てくるのは徹底した本物主義じゃないでしょうかね。

極力CGを使わないことで有名で、必要なモノは全部本物を用意しないと気が済まない人なんですよ!

 

それってなかなか無理じゃないの、って?

 

確かに無理なモノもありますよね!

例えばSF映画とかのように本物も何も地球に存在してないモノとか、でもそういうのも全部セットや特撮で作っちゃうんですよ。

必ず実際のモノとしてその場に存在させるんですよ。

例えばビルを爆破するシーンなどは、普通都合良く爆破してもいい本物のビルなんて無いじゃないですか、だからわざわざビルを建てるんですよ、爆破する為だけに。笑

とか、もの凄く広大なトウモロコシ畑が必要なシーンなんかは今は普通はCGでビャーッと描いたらいいじゃないですか、本当にトウモロコシを1から育てて広大なトウモロコシ畑を作っちゃうんですよ。笑

 

どうかしてますよね!笑

 

すごい手間がかかってしまいますよね。

 

あと映画の撮影もデジタル撮影じゃなくて、フィルム撮影にこだわってるんですよ。

これもモノですよね。

 

あれ、映画って普通はフィルムなんじゃないのかって?

 

それがですね、もう違うんですよ!昔はフィルムカメラで撮影してたんですけど、ジョージ・ルーカス監督が2002年公開の『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの逆襲』で初めて完全デジタル撮影を行って以降映画撮影用のデジタルカメラの性能もどんどん上がっていったこともあり、今やデジタル撮影の方が映画業界の主流なってきてるんです。

特に日本はほとんどデジタル撮影です。

 

 

なぜかって?

 

フィルム撮影というのは、文字通りフィルムに映像を光として焼き付けて撮影するわけなんですが、もちろん消去して撮り直すなんて出来ないから新しいフィルムと交換するしかないし、現像に出すまではどんな映像が撮れてるのか確認出来ないんですよ。

しかもフィルムは1回使ったらそれっきりだから、撮り直しをすればするほどどんどん使用するフィルムも多くなってお金もかかるんですよね。高価ですから。

カメラ本体も大きいから場面によっては扱いが大変な時もあります。

 

要はフィルム撮影は手間とお金がかかるんです。

 

それに比べてデジタル撮影は映像をデジタルデータとして保存するんでその場で映像をチェックできるし、パソコンでデータをやり取り出来るので他の作業もやり易いです。

容量も大きいのでフィルムのように交換しなくても撮り続けられるし、フィルムのように撮り直しのコストもかかりません。

あと小型化も進んでるので色々な場面で扱いやすいです。

 

要はデジタル撮影は楽で早くてお金も安いんです。

 

近年は、よほどの大作じゃないとお金や時間をかけて映画を作ることが難しい時代なんでデジタルへ移行していくのも分かる気もします。

 

つまりデジタル撮影の方が優秀でフィルム撮影の方が劣っているのか、って?  

 

ここまでの説明を見てたらそう思っちゃいますよね、しかしフィルムを回転させながら光を焼き付けるというアナログな撮影でしか出せない映像の質感があります。

これをデジタルで完全に再現するのは今のところ不可能とされてるんですね。

逆にデジタルはシャープで高画質、映画撮影用デジタルカメラの大手は8Kの画素数を実用化しようとしてるぐらいです。

 

僕は4Kのテレビもまだ持ってないのに。(知らんがな)

 

フィルムもデジタルもそれぞれの特徴があるということです。

 

ここでまたノーラン監督の話に戻りますが、彼がなぜそこまでフィルム撮影にこだわるのかというと「単純にフィルムの方がデジタルよりも優れているから」と言ってるんですね。

まさにその言葉を裏打ちするような性能の撮影カメラをノーラン監督は愛用しています。

それはIMAXフィルムカメラと言われるものです。

 

 

●  IMAXフィルムカメラという武器

 

このIMAXって言葉は映画が好きな人なら聞いたことありますよね。

 

もしかして映画館で高い料金のやつ、って?

 

そうですね!最近日本の劇場でも少しずつ増えてきましたからね。

最初の方は3Dなのに暗くない!ってことでジワジワ評判を上げていったような気がします。

 

それがどんなものかと簡単に言えばバカでかい大きさの画面で撮影できてバカでかい大きさの画面で上映できるってことですかね。

観た人なら分かると思いますけど、IMAXシアターのスクリーンってめちゃくちゃ大きいですよね?

ただここで1つ言っておきたいのは、IMAX上映されてる作品の割と多くは普通の規格のカメラで撮影した映画をIMAX用にデジタルで変換して上映してるものです。

いわば「(仮)IMAX」と言ってもいいかもしれません。

もちろん通常の上映よりも音も画面も圧倒的に良い環境なのは間違いないし、個人的には仮でもなんでもIMAX上映の選択肢が増えるのは嬉しいです!

 

じゃあ本物のIMAXとは何かといえば撮影の段階からIMAXカメラで撮影されたもの、という事になりますね。

そしてこのIMAXカメラにもフィルムとデジタルがあります。

デジタルの方は、最近だと『アベンジャーズ  エンドゲーム』が全編をIMAXデジタルカメラで撮影されたことがちょっとした話題にもなってましたね。

IMAXということでデジタルカメラの中でトップクラスの性能で、登場人物の表情の演技や大人数をなるべくカットを割らずに収める構図など、大画面&超高画質を活かしたIMAXデジタルでカメラで撮影したことが贅沢で意味のあるものになってました。

デジタルカメラなんで後のCGとも相性良いですしね。

 

そしてノーラン監督が取り入れてるのがIMAX70mmフィルムカメラです。

はい出ました、フィルムです。

少し前に説明したあのめんどくさいフィルムですよ!

それがIMAXともなればめんどくささも尋常じゃありません。

なにせ動画撮影用フィルムでは最大面積の70mmです、フィルムもカメラもバカでかいし重たい、しかも1度の撮影(フィルム1ロール)で撮影可能な時間はわずか3分間!笑

しかし、その性能たるや他の追随を許さないものがあります。

なんとその画素数は16Kと言われています。

フィルムならではの質感がありながら、とてつもない超高画質の鮮明さも味わえて、フィルムというアナログなモノの性能を極めると現在最も贅沢で高性能な撮影が出来るのも面白いですよね。

しかし、このカメラ、開発したは良いけどカメラ本体が大きくて取り扱いが大変なのでもともとは環境記録やドキュメンタリーや実験映画で使われてたのをノーラン監督は普通の映画、しかもカメラをガンガン動かすアクションシーンで無茶して使ったんです!

それが『ダークナイト』ですね。

結果的に当時世界で4台しかないIMAXカメラを1台壊してしまうほど無茶したんだけど、その結果ダークナイトのヴィラン(悪役)ジョーカーの冒頭の一連の銀行強盗のシーンなど、めちゃくちゃカッコいい映像が映画を引き立てる大きな要素になりました。

 

とにかく、とっても贅沢でとっても面倒くさいモノなんですよ、IMAX70mmフィルムというのは。

もし仮に制作費が潤沢にあっても好き好んで使う監督はあまり多くないと個人的には思います。

 

はい、ようやくここまで来ました!笑

 

長かったって?

 

確かに、だいぶ遠回りしてしまったことはごめんなさいね!

でも僕の中ではこのIMAX70mmフィルムカメラ(をわざわざ苦労して好き好んで使うところ、そして自在に使える状況や立場も含めて)ノーラン監督作家性の1つだと思ってるので、その為にはどうしても最低限の説明が必要だったんです!

まあ、ノーラン監督のとにかくデジタル撮影ではなくフィルム撮影へのこだわりは分かってもらえたんじゃないでしょうかね。

 

CGに頼らず本物の用意したりセットを組んだり、あるいは特撮を使ったり。

撮影もデジタルカメラしゃなくフィルムカメラで撮る。

あれ?つまりそれって昔の映画のやり方そのものですよね。

クリストファー・ノーランという、話題性でも興行的にも、内容的にも、映画界の最先端で活躍しながらもどんどん時代と逆行していくところが面白いんですよ。

 

アカデミー賞を逆走している僕も親近感が湧きます。

 

お前さんの、のんびり過ぎる逆走と一緒にしちゃあいけねえなあ。(だから誰なの!?)

 

ノーラン監督は時代に逆行と言っても、単に昔の映画のやり方をなぞってみせるんじゃなくて

最先端のやり方で逆行するのが良いところですね。

そして毎回話題になりちゃんとヒットしている、商業性と作家性がもはや1つのものとして個性になってるのがすごいところです。

 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

なんて綺麗な映像

 

 

● 時間軸をいじるのが大好き

 

この、時間軸をいじくるというのはもうノーラン監督の代名詞と言ってもいいかもしれません。

 

映画というのは普通は現在から未来へ一方通行で時間が流れるもので、その中でたまに回想シーンとかで部分的に過去になったりもしますが、時間軸としては分かりやすいですよね。

 

しかし、ノーラン監督はこの普通は現在から未来へ流れる(普通→→→→)時間軸を色んなパターンでいじって物語を描くのが好きで、特に時系列をシャッフルさせて終盤に進むにつれて全貌が明らかになっていくような作りが多いですね。

この辺がなんだか難しい印象に感じる人もいれば、それを深読みするのが楽しいんだと感じる人もいます。

このノーラン監督の時間軸いじりが全て作品において毎回効果的だったのかは映画好きには若干評価が分かれるところもありますが、それでも毎回「お、今ノーラン作品を観てる感じするぅ〜」という気持ちには結局なってるはずなのでまぎれもない作家性と言えるんじゃないでしょうか。

 

●  ハンス・ジマーの音楽

 

ハンス・ジマーというドイツの有名な映画作曲家がいますが、ノーラン作品の多くでタッグを組んでいて、個人的にはノーラン作品の印象的なシーンを思い出した時は必ずハンス・ジマーの音楽もセットで思い出すぐらいです。

 特に、音の錯覚とループを利用して音階が終わりなく上がり続けていくような「無限音階」は映画の場面の緊張感を演出するのに抜群の効果で、ノーラン作品の様々な場面で使われてますね。

 

急に映画音楽の作曲家の話をされてもピンとこない人もいるかもしれませんね。

『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲って口ずさめますか?

すぐ頭に浮かんできますよね!

あの曲を作ったのがこのハンス・ジマーという人なんです。

 

僕はハンス・ジマーの音楽ならニコラス・ケイジとショーン・コネリーのダブル主演の監獄破り映画『ザ ・ロック』のテーマ曲が1番好きです。 

 

べつに聞いてないって?

 

すんませーん!

 

●  徹底したリアリズム(?)

 

とことんリアルに描く!というような感じでしょうかね。

例えば『ダンケルク』の中ではすごく良い奴、頑張ってる奴、そんなの関係なく戦争では死ぬというのはリアルでした。

本物主義とセットで語られることの多い、ノーラン監督の特徴の1つですよね。

やはり『バットマン』というアメコミヒーローをリアル路線でシリアスに描いたことでリアリズムのイメージが定着したような感じですね。

 

『バットマン』をリアルに描くってどういこと、って?

 

それはもちろん怪人コウモリ男として大きな羽と毛に覆われた顔に鋭いキバが光る…違う?ああそういう類のリアル化じゃなかったですね。

 

そっちじゃなくて我々の現実世界に寄せたリアル化ってことで、バットマンゴッサム・シティというアメリカの架空の都市の治安を守るヒーローなのは知ってますよね?

今までの別のバットマンの映画に出てくるゴッサム・シティは架空性の強いイメージカラーで作り込まれた世界観だったのが、ノーラン監督版のバットマンはゴッサム・シティとしながらもほぼ全てをシカゴで撮影し、そのままを映してるんですよ。

つまり絵面上をそのまんまシカゴにすることで、まるで僕らの世界の都市で起きてることのように想像させるんですよね。

そこで治安を守るバットマンの武器や乗り物も、驚くことにまるでフィクションのように見えて実は全て現実の世界で技術的に実現可能な(もしくは実用化されている)ものばかりを揃えてます。

 

まあザックリ言うと、もしこの世界に本当にバットマンが存在したならばどんな事になるのか?というのを突き詰めて描いてるわけですね。

 

バットマンシリーズだけじゃなく他のジャンルのノーラン作品でもリアルに描くということをやってるんでリアリズムの監督のように見えるんですけど、面白いことに本当はリアリズムの監督じゃないと思うんですよ。

むしろやろうとしている事はその先、「リアルの抽象化」だと思います。

 

何でわざわざそんな事を?

と、思いますよね。

 

その辺の話はまた後で出てくると思うんでどうぞ先を読み進めてください。

 

 

 

体験する映画

 

クリストファー・ノーランという監督の映画は、「観客に体験させる」ということに対して重きを置いて、挑戦し続けている作品ばかりだと思います。

その為に本物を用意して、時にはモノを作ってリアルな世界観を用意して観客の体験に説得力を与えようと試行錯誤してるんですね。

 

「観客に体験させる」という挑戦を毎回重ねてきたという部分では、この『ダンケルク』はまさにノーラン作品の中でも最も体験する映画となってるんです。

 

まずIMAX70mmフィルムカメラによるもう少しで触れそうなぐらい超高解像度の映像、そして本当に現地ダンケルクへ行って撮影してるんですけどカメラの前の光景をそっくりそのまま焼き付けるフィルムの特性も相まって浜辺に大量に並ぶ兵士や波や泡と広がる浅瀬に、その場の匂いまで伝わってくるようなんですよ。

そして、当時のスピットファイアを空に飛ばし当時の駆逐艦を博物館から借り出して現場に用意し、あの時代の兵士が見たであろう光景の名残を画面の中に過去のダンケルクから呼び寄せようとしてるのです。

 

そして観た人なら気付くと思いますが、この映画はセリフが異常に少ないんですよ!

これがまた効果的で、確かに生きるか死ぬかの状況で逃げてる時にベラベラしゃべらないですよね。

ましてや映画のように気の利いた冗談なんて実際の戦場でしてる余裕なんて無いですから。

あと、セリフが少ないから自動的に説明も少なくなるわけで、その都度状況を説明してくれる都合のいい人なんて戦場にそうそういないですから。

そうなると観客も状況が把握できない感じが、主人公の立場とシンクロしてまた良い効果が生まれるんです。

先の事なんてどうなるか分からないから、毎回毎回その瞬間に次々と起こる危機に対して、知恵や行動や運でこれも毎回毎回しぶとく生き残るしかない、そんなサバイバルを体験するような映画ですね。

そして、常に時計のチクタク音が鳴っているので、嫌でも追い詰められる感じになります!笑

 

音に関するアカデミー賞の部門のうち【録音賞】【音響編集賞】の2つを受賞してます。

戦争映画にとって音がどれほど大事な要素かは『プライベート・ライアン』が証明してますが、この作品もリアリティを出す為に戦場の音の生々しさにこだわってました。

 

 

©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

戦争当時の街を歩いてるよう

 

もはや凝ったストーリーは必要ない!?ノーラン監督がついにたどり着いたようです

 

おおむね好評なこの映画で賛否が分かれる1つに、今作はこれまでのノーラン作品と比べてほとんどストーリーやドラマが無いというのがあると思います。

 

 

普通は戦争映画といえば人間ドラマの宝庫のようなもんですから、そう期待して観た人は戸惑っても仕方ないかもしれませんね。

 

いくらでも人間ドラマを描くことが出来たのに敢えてドラマ性を排してほとんどストーリーの無いものを描くわけですが、それはなぜか。

当然、単なる思いつきではありません。

 

ノーラン作品は時間軸をいじって複雑に作り込まれたストーリーを楽しむのも正解だと思いますが、ここではせっかくなので少し違う角度からノーラン作品をイメージしてみましょうか!

 

ノーラン監督は毎回作品を作る中で何をやろうとしてるのか、「リアルの抽象化」じゃないかなと思います。

もちろんやろうとしてる事は毎作品その都度あるんだけど、でもこの「リアルの抽象化」はどのノーラン作品にも共通してると思います。

ノーラン作品はリアルを追求してる的なことをよく言われるんだけど、実はよくよく見ると、リアリズムを描くのならば大事な部分や描写も割とあっさり省いたり、逆にそれを入れるとリアルじゃなくなるという描写やシーンを思いっきり入れてきたりして、べつにリアリズムを目的とした映画作家じゃないんですよね。

例えば『ダークナイト  ライジング』の合戦はリアリズムとは真逆な例として1番有名じゃないでしょうか。

 

じゃあリアリズムを追求してる訳じゃないなら、何のために本物にこだわるの?

 

と言う前に、ノーラン監督作品には毎回それぞれテーマがあると思います。

しかも、ある作品では「愛」とか、ある作品では「正義」とか、ある作品では「心」みたいな大きくて非常にザックリしたものがテーマになっています。

そしてザックリしてる割には、映画を観た人にもそのテーマは結構伝わってるんじゃないでしょうか。

 

さっきの話に戻りますが、なんのためにリアルの抽象化なんてするのかというと、「作品のテーマそのものを抽象化したい」そのための手段としてリアルの抽象化をしてるんじゃないかと思います。

 

なんでそんなめんどくさいことするのって?

 

なぜなら「愛」とか「正義」とか「心」とか、それ自体がそもそも非常に抽象的で、しかし「映画作品」として抽象化したい。

抽象的なものを更に抽象化したところで、何だかよく分からないぼやけた印象を観客に与えるだけで、大事なテーマが伝わらないかもしれません。

 

だからその間にリアリズムを挟むんですね。

 

抽象的なテーマを、徹底した本物志向とリアリズムで固めて観客に実在感を与え、それを今度はまた映画作品的に抽象化して描いてみせることで、ノーラン作品独特の終盤のエモさに着地するんじゃないでしょうか。

 

かといって、今までのノーラン監督作品の全てが同じ分量で抽象化されてたかといえば、そうじゃないと思います。

僕の印象では作品を重ねるごとに少しずつ抽象化のレベルが上がってる気がします。

つまり、この『ダンケルク』はこれまでのノーラン作品の中で断トツで抽象化のレベルが高いと言えるんです。

 

じゃあこの『ダンケルク』テーマとは、何を抽象化してるのか。

今回ノーラン監督がやろうとしたのは『ダンケルク スピリット』そのものの抽象化なんですね。

単にスローガンとして使われる言葉だけれど、実はその中にある精神や苦難や希望だったり、もはや言葉ではダンケルクスピリットに宿った本来の“それ”を感じることができない世代に映画の体験という形で抽象化して伝えたんだと思います。

実際にノーラン監督は若い頃に奥さんと一緒にこの『ダンケルク』と同じ英仏海峡を小船で19時間かけて渡ってみたことがあるんですよ。

その時は天候も悪いし道のりも長いし、ずっと波で揺れていて、「ものすごく恐くて大変だった」と言ってるんですよ。

結果的にはその体験が、長い時を経て『ダンケルク』という映画を作るキッカケになってるんですよ、これが。

その体験を人々に与えられる手段がノーラン監督の場合は映画ということなんですね。

 

そして、今回やろうとした事がダンケルクスピリットの抽象化ということなんですが、

 

そういうばよぉ、抽象化ってよぉ、対象の注目すべき要素を重点的に引き出して他は無視したり省いたりすることを言うんだよなぁ〜、おっと、邪魔したな〜。(だからあんた誰?ていうかありがとう!

 

ということで、まあノーラン監督がやろうとしたのは「ダンケルクスピリット」抽象化って言いましたよね。

つまり描きたいのは個人のストーリーや人間ドラマじゃないんですよ!

だからこの映画からセリフやストーリーをほとんど無くしたんですよ。

しかもストーリーだけじゃなくて、主要な登場人物達の個人的な背景も省いてます。

だから敢えて主人公は無名の俳優をキャスティングしてるんですね。

あれだけ本物を用意してリアルに再現してるのに追い詰める側の「ドイツ軍」という単語は出てこなくて「敵」とだけ呼ばれ、しかもその姿も見えないんです。

戦争映画の割には戦場にほとんど死体が映らないは救助するための戦いだからというのもまあ一応ありますが、実際には空爆などで何千人もあの浜辺で死者が出てるんですけど、ノーラン監督が描きたいのは戦争ではないのでどうしても必要な死体以外そこも省いてるんですね。

そして空爆でそれだけ死者が出た、つまり空にはもっともっと沢山の戦闘機の数が飛んでないとおかしいんですけど、そこもリアルではなく「撤退を助ける英軍戦闘機とそれを邪魔する敵の戦闘機」を表す数機だけに抽象化されてます。

もっと言うなら、このダンケルク戦い(ダイナモ作戦)自体の割と大事な詳細も遠慮なく省かれてます。というより「陸」「海」「空」の3つの時間軸に分けることでうまく抽象化されてます。

 

そうやって、「ダンケルクスピリット」を抽象化する為の重要な要素以外を次々と削ぎ落としていったら、上映時間が長くなりがちなノーラン作品の中で最短の106分という記録を叩き出したわけなんです!

 

もちろん、「史実ベース」という強固なプロットがあったから極限まで削ぎ落とせたんだと思いますけどね。

ちなみに、僕がこの映画で1番最初に驚いたのは上映時間が106分というところでしたからね。笑

 

でもこの上映時間の短さが、普段はノーラン作品に行かない人も観に行くきっかけなって大ヒットにも繋がったんですよね。

 

 

ここでちょっとノーラン監督の作家性のおさらいをすると

 

● 本物主義

● リアリズム

● IMAX70mmフィルム

● 時間軸をいじる

●  ハンス・ジマーを始めとするノーラン組(スタッフ)

● リアルの抽象化=テーマの抽象化

 

ということで、これまでノーラン監督についてずっと説明してきたような文脈でこの『ダンケルク』を観ると、もちろん好みはそれぞれあるとして、実はこれまでのノーラン監督の数々の映画の中では最もテーマと作家性が結実した作品だと思います。

 

 

 

ラストシーンについて

 

少しネタバレっぽくはなりますが、もしまだ映画を観てなくても読んだところでそこまで影響はないかと思います。

 

最後とある人物が生き残って列車の中で新聞を読みながら苦い顔をしてましたね。

普通ならこの大撤退を成し遂げた事を鼓舞するようなシーンなんだけど、1人苦い顔をしてますね。

 

それはなぜ?

ということで、どちらかと言えばオープンなラストになってると思うんで観た人それぞれの感じ方や解釈で良いんじゃないでしょうかね。

僕は個人的に思ったのは、一応物語上では沢山の兵士が無事撤退できました〜めでたし〜で終わるんだけど、戦争は終わってないんですよ。

苦難を乗り越えてやっと生きて帰ることができたと、生きているとはなんと尊いことか!と皆が思いますよね。

しかし、新聞に書かれているチャーチルの演説は雄々しい勇敢な言葉でイギリスを鼓舞するような内容で、つまりせっかく助かった命を次の戦場で散らせて来てほしいと言っているのと実は変わりないんですよね。

事実、歴史を振り返れば『プライベート・ライアン』を観たら分かるとおり、彼らは後にダンケルク以上の地獄へ行く事になるわけですからね。

生き残ったのに、また死んでこい。

それが戦争というもの、という何かが透けて見えるようなラストの苦い表情じゃないでしょうかね。

 

あとこれも、最後とある人物が戦闘機を燃やす場面がじっくり映し出されますね。

 

なんで燃やすの?っていうのは疑問にあると思うんですけど。

 

まあ一般的に考えたら敵にこちらの技術を無傷で渡さないために燃やしたり沈めたりするのは普通のことなんですけど、それと同時に理不尽な死に方でちゃんとした葬いもされない死んだ戦友達への火葬のようにも見えますし、その後の更なる戦火を不吉に暗示してるようにも見えます。

やはりこれも、戦争に関して「めでたし」では終わらせないという明確な意思を感じますね。

 

 

終わりに

 

長くなってしまいましたが。

 

なんだかんだ最後まで見たぞ?

 

それは嬉しいですね!

 

この『ダンケルク』、戦争の中での人間ドラマを期待するのではなく、「ダンケルクスピリット」とは何なのかを体験しに行くつもりで観ると楽しめると思います。

 

「生きたいという思い、命を救いたいという思い、その行為を助けたいという思い」逆境に負けない強い思い、相互の手の伸ばし合いがそれらを1つに繋げた命のリレー、まさにダンケルクスピリットを体験する映画ですね。

 

 

クリストファー・ノーラン監督は観客に映画をただ観るのではなく体験してもらいたいと考えてるのは言ったと思いますが、そこには映画館に足を運んで観に行くという体験も含まれてるんですよ。

 なので、映画館の環境でしか味わえない部分の感動があるのは確かです。

それはストーリーではなく、映像を見て聴いて当時のダンケルクを体験するという言葉にできない部分の感動ですね。

 

じゃあ、映画館以外では観る価値がないのかって?

 

そんなことないですよ!

 

僕も公開当時劇場のIMAXで観て、今回の機会に初めてテレビ画面でも観ましたが迫力あってすごかったですよ。

やっぱ元の映像がめちゃくちゃ綺麗に撮影されてるんでテレビ画面でも十分に味わえると思います。

あと大事なのは音ですかね、スピーカーやヘッドフォンのサラウンド環境があればベストですけど、それがなくても普通のヘッドフォンでいいんで装着してちょっと大きめな音量で観て欲しいです。

 

用意できる範囲で1番大きいテレビ、そしてヘッドフォン!

これがノーラン作品を楽しむ準備かなと思います。

 

 

ぜひ観てみてください!

 

 

それではここまで読んでくれてどうもダンケ!(それで締めるんかーい!ということで長々と読んでくれてありがとうございます)

 

 

 


映画『ダンケルク』予告3【HD】2017年9月9日(土)公開

 

 

 

 

 

 

 

映画『ゲット・アウト』 出て行け?…はい!喜んで!!誰もが心の中で叫びたくなる心地悪さ。全ては伏線と暗示、新感覚「彼女の実家ホラー」【第90回アカデミー賞】

 

『ゲット・アウト』

 

第90回アカデミー賞(2018)

 

【脚本賞】

 

  

(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS

 

監督:ジョーダン・ピール

制作:ジェイソン・ブラム、ショーン・マッキトリック、エドワード・H・ハム・Jr.、ジョーダン・ピール

制作総指揮:レイモンド・マンスフィールド、クーパー・サミュエルソン、ショーンレディック、ジャネット・ボルトゥルノ

脚本:ジョーダン・ピール

撮影:トビー・オリバー

美術:ラスティー・スミス

編集:グレゴリー・プロトキン

キャスト: ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー、スティーブン・ルート、ベッティ・ガブリエル、マーカス・ヘンダーソン、キース・スタンフィールド

 

 

 

恋人がいると楽しいですよね。(唐突

 

しかし付き合ってる中での流れとして、お互いの関係をもう1段階進める為のステップ【彼女の実家に行く】という行事がありますよね。

しかも彼女の実家が人種の違う家だったらどうしますか?ちゃんと受け入れられるのだろうかと、さぞかし緊張しますよね。

この映画はそうやって覚悟して臨んだ【彼女の実家に行く】の内容がどんどん悪い方向に向かっていく恐怖に耐えられなくなって帰りたくなるナイーブな男心をホラーとして巧みに描いた映画なのです。

 

ということで基本ネタバレなしで紹介したいと思います!

 


『ゲット・アウト』予告編

 

 

あらすじプラス

 

冒頭、1人の黒人の青年が夜道、閑静な住宅地を歩いてるんだけどいかにも何か起こりそうな予感がしますなあなんて思ってたら案の定めちゃくちゃ怪しい車がゆっくりと近づいてきて、その青年は何者かに襲われ車で連れ去られてしまうとこから始まるんですよ。

 

いかにもって感じだねって思いました? 

 

僕もそう思っていました、あの頃は…。

 

場面は変わり、主人公のクリス(ダニエル・カルーヤ)は恋人のローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に挨拶に行くことになってなかなか緊張してる様子です。

しかも自分が黒人であることをローズが両親に伝えてなかったことをえらく気にしてるわけですが、もうこの辺から「不穏レベル」1上がりましたねえ〜。

でもローズは「父と母は人種を気にするような人がじゃないわ、きっと歓迎してくれる」と緊張するクリスを安心させてあげて、車で実家へと出発します。

そしてローズが車を運転するその途中の山道で「鹿」に衝突されてしまって「不穏レベル」2になり、その事故現場にやってきた警官が主人公を黒人というだけで執拗に身分を証明させようとして「不穏レベル」3に上がるんですよね。

ただそこでローズ「あたいの大事な男に何を不当な扱いしてくれとんじゃ」(多分訛ってなかったと思います)的なニュアンスで警官を一喝して事なきを得るんだけど、その時のローズがめちゃくちゃカッコイイんです!

「私の男は私が守る」ってな具合で、これは主人公も惚れますね。

 

その後ローズの実家へ到着するんだけど、さっそく庭を黒人の使用人が掃除をしいる光景を見て「不穏レベル」4に、笑顔で話しかけてくれるローズの両親に歓迎されながらも更には家のキッチンには黒人のメイドも、これで「不穏レベル」5に上がりました。

しかしローズの父親は「言いたいことは分かる、白人が黒人を使う(南部の)典型的な家に見えるだろうが私はリベラルだ。もしもオバマに3期目があればきっと私は〜ベラベラ〜」という話を聞いた主人公は一応納得した様子で、「不穏レベル」も一気に3にまで下がりました。

しかしその夜、皆揃っての夕食の時にやけに黒人を過剰に持ち上げるような褒め会話に「不穏レベル」がまた4になり、やたらと格闘技を組みたがるローズの弟「不穏レベル」8になります。

夜中に外でタバコを一服しようとすると黒人使用人が家の周りを黙々と全力疾走しているのを見て「不穏レベル」15になります。

そして上を見上げれば窓ガラスを見ながら1人でニンマリ笑ってる黒人メイドを目撃して「不穏レベル」30に上がります。

家の中に戻ると「これで禁煙できるから」とローズの母親から催眠療法を受けたらその後で悪夢を見て「不穏レベル」100に、そして次の日にローズの両親達の親族や友人を招いた謎のパーティに参加した主人公の居心地の悪さに「不穏レベル」180に、そして黒人メイドの「No,No,No,No,No,No,No...」で「不穏レベル」300まで上がり、謎のパーティーのビンゴ大会「不穏レベル」1000に到達したのでした。

 

もうやだ、これ絶対何か起こる。

 

と観客の誰もが思ったそこからこの映画は大きく展開が変わっていくんです。

 

はたして主人公は非常に居心地の悪い彼女の実家からゲット・アウトすることができるのか?

 

謎のパーティとは何なのか?

 

とうとうレベル260にまで達した、この作品を包む「不穏レベル」の正体とは何か?

 

といったところを軸に物語が進んでいきます、その辺りに注目して観ると良いと思います。

 

 主要登場人物キャスト

 

  ダニエル・カルーヤ  

©2017 Universal Pictures

 

 劇中では写真家の黒人青年クリス・ワシントンを演じています。

 

この俳優は『ジョニー・イングリッシュ気休めの報酬』『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』『ボーダー・ライン』などで脇役として出演してますね。

この作品で長編映画の主演を初めて務めます。

今時な繊細さも感じさせる風貌と確かな演技力で見事に役にハマってて、それが評価されて第90回アカデミー賞では主演男優賞にもノミネートされてましたね。

それが評価されて、その後MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画の『ブラックパンサー』では主人公ティ・チャラの親友の役としてキャスティングされます。

 

●  アリソン・ウィリアムズ

©2017 Universal Pictures

 

 劇中では大学生で、主人公(クリス)の恋人の白人女性のローズ・アーミテージを演じてます。

 

彼氏を引っ張っていく強い女性として好演してました。

TVドラマ『 GIRLS/ガールズ』にメインキャストとして出演してた女優さんですね。

この作品が長編映画初出演のようです。

 

●  キャサリン・ キーナー

©2017 Universal Pictures

 

劇中ではローズの母親で、催眠療法を使う心理療法家のミッシー・アーミテージを演じてます。

 

様々な作品で存在感のある脇役として活躍していて『マルコヴィッチの穴』『カポーティー』などが有名ですかね。

 

●  ブラッドリー・ウィッドフォード

©2017 Universal Pictures

劇中ではローズの父親で脳神経外科医のディーン・アーミテージを演じてます。

 

TVドラマ『ザ・ホワイトハウス』のジョシュ・ライマン役が有名ですね。

 

●  ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ

 

こちらは『アンチヴァライル』より引用 (C) 2012 Rhombus Media(Antiviral)Inc.

 

劇中ではローズの弟で医学生のジェレミー・アーミテージを演じてます。

 

17歳の時にチョイ役で出演した『ノーカントリー』で映画デビューします。

その後TVドラマや映画の脇役で活躍して2011年公開『X-MEN:ファーストジェネレーション』で一気に注目を浴びます。

個人的には、彼の出演作品に僕の好きな映画が多いことから自然と注目するようになった俳優さんです。

特に『スリー・ビルボード』は印象に残りましたね。

 

●  リル・レル・ハウリー

©2017 Universal Pictures

 

劇中ではクリスの親友で、TSA(運輸保安庁)に務めている黒人青年のロッド・ウィリアムスを演じてました。

 

この作品の演技が評価されてこの後『TAG タグ』『バード・ボックス』にも出演してます。

 

 ゲティ・ガブリエル

©2017 Universal Pictures

 

劇中ではローズの実家のメイドの黒人女性ジョージナを演じてました。

 

『パージ:大統領令』でカッコイイ姉御を演じてたのが彼女ですね。

この作品では誰もが印象に残る不気味な存在感を残してました。

まだ新人女優さんですがこれから見る機会のも増えて行くことでしょう。

 

●  スティーヴン・ルート

Stephen Root at a tenth anniversary event for the film Office Space.by Matthew Wedgwood is licensed under CC BY 2.0 

 

 

劇中ではローズの実家のパーティーの招待客の盲目の画商のジム・ハドソンを演じてます。

 

多数の映画やTVドラマに出演するベテラン俳優さんで、この作品でも出番こそ多くないですが存在感を放ってます。

 

 「見どころ」はここだ!

 

気持ち悪いという恐さ

まずはここからでしょうね。

というかネタバレ無しでこの映画の面白さを紹介するのは結構大変なんですよね〜。

だからとっとと観て下さいね!と言うのが1番早いかもしれませんね。

 

うん、わかった今すぐ観るって?

 

いや、すごい素直じゃないですか!笑

 

それはもちろん観てくれるなら嬉しいですけど、なんか悪い気もするんでちゃんと紹介しますよ!

 

この映画はホラーとかスリラーなんて宣伝されてるから気構えて観ると、映画の冒頭こそ直接的に恐いシーンがあるんですけどその後は当分無いんですよ。

この作品は最初にガツンとかましておいて急におとなしくなるんですよ、それもそれで恐いんですよね。

そのなにが恐いかって言うと、直接的に何か起こってるわけじゃないのに観てる観客に「どこかがおかしい」と常に何か気持ち悪い感覚を味あわせてくるんです。

しかもそこも単に恐いだけじゃなく、ちょっと笑える感覚も混じっていたりするんでどうも変というか主人公のクリス同様に観客にも居心地の悪さを感じさせるんですね。

そういった恐さと笑いの奇妙な同居というのが、この作品の特徴じゃないですかね。

だから観てると、あの人は何か変じゃないか、変…だよね?この家は何か変じゃないか、変…だよね?と勝手に不安定な想像を膨らませてしまうのです。

 

「不穏レベル」の正体と監督のジョーダン・ピール

僕が勝手に「不穏レベル」と名付けて遊んでた(ごめんなさい)あの気持ち悪さとは一体なんなのでしょうか。

 

それは、大雑把に言ってしまえば日常の中の無自覚な差別ですね。

 

それこそがこの映画全体を包んでいた「何か気持ち悪いという恐さ」なんです。

 

そういう映画だったんだって?

 

そうなんです、実は人種差別に対する訴えがしっかりと込められた作品なんですよ。

 

どうしてホラー映画なのにこういうテーマの作品が作られたのかは、監督のジョーダン・ピールという人を知ればとても分かりやすいと思います。

 

Key and Peele with their Peabody Award.byPeabody Awards is licensed under CC BY 2.0

 

ちなみにこんな人です。

 

そんな監督は知らないって?

 

多分そうだと思います!

僕もこの作品で知ったぐらいですからね。

監督としても新人なので日本だと特に馴染みがないですもんね。

ニューヨークで生まれたアフリカ系アメリカ人なんですが、キャリアとしてはコメディアンとして人気が出た人なんです。

同じくコメディアン仲間のキーガン=マイケル・キーと共にコンビを組んだ「キー&ピール」という番組などがあります。

さっそくネットで「キー&ピール」の動画を見てみたんですけど、これが結構面白くてこのブログを書く手が止まるというね。笑 

 

これとかは、お互いどっちのかぶってるキャップがより新品か張り合うといったおバカな内容で、英語が分からなくても普通に面白いと思います。


Key & Peele - Dueling Hats

 

 

そういえばよお、日本でコントと呼ばれる笑いのスタイルをアメリカではスケッチと呼ぶんだよなあ(...お前誰だよ)

 

それでどういう内容のスケッチが多いかと言うと、主に自身の身の回りのストリートカルチャー(文化)や社会問題や人種問題などの違和感や可笑しさを探してネタにするということをやっているんですよね。

そういう誰しも日常で波風立てないようにして見て見ぬふりをしている本当はそこにあるはずの些細な差別感情や言動を探し出す目線、いや「拾い出す目線」を持った人なんです。

そういった場面を、普段は無関心を装い無かった事にして過ごしてしまっている自分の変わりにツッコんでくれるから面白がってみんなジョーダン・ピールの笑いを見るわけですね。

そして自身が初めて映画の監督をすることになり、昔から大好きだったホラーというジャンルで作ろうと思った時にも、さっき言った日常のさりげない差別を「拾い出す目線」を取り入れようと思ったわけです。

 

人を笑わせるコメディアンなのに、人を恐がらせるホラー映画が大好きというのもなんだか面白いですよね。

実はそれがこのジョーダン・ピールという監督の個性でもあるんです。

監督のインタビューなどによれば笑いと恐怖というのは真逆のように見えて実は両方の感情の出発点は同じ場所という考えを持っているようです。

 

分からないようでちょっと分かる気もするって?

 

僕もちょっと分かる気がして、コント番組とか見てても、登場人物の個性があまり行き過ぎたら笑えるけど恐い感覚とスレスレだったり。

それがあるラインを越えると日本だと引くとかドン引きするっていう表現の使われ方になるんだね。

 

ホラー映画に関しても小学や中学ぐらいのときなんか怖すぎるとなぜか笑ってしまってたからね。なにこの怖さ、バカじゃないの?って。笑

これなんかそものもズバリですよね。

 

監督によれば、そもそも人間は完璧ではなくて常にどこかで不合理だったりズレてたり不条理なものを抱えた存在で、まるで不完全な生き物です。人間とは。

その不完全さの正体は一体なんなの??という大きな好奇心が人々をコメディだったりホラーに駆り立てるのです。

そのもやもやした不完全さを笑いや恐怖としてちゃんと受け入れることで人の心が整理されて感情をコントロールする余裕が生まれるんだそうです。

 

あとはそういう深いところだけじゃなくて、もっと単純に映画の構造としてもコメディとホラーは共通する部分が沢山あるみたいです。

だから監督もこれまでコメディで学んできたことを今回のホラー映画に思う存分に使うことが出来たと言っていますね。

 

これも確かにコントの設定って冷静に考えればそれ恐いよねってのも沢山あるし、ホラー映画の話の設定も冷静に考えたらバカらしくて笑えてくるのも沢山ありますもんね。

その天秤のバランスなんですね、笑いと恐怖というのは。

 

アカデミー賞の脚本賞をゲット

この映画は第90回アカデミー賞の脚本賞を受賞しています。

映画において脚本はとても重要で、これが作品ほ骨組みになります。

そしてこの映画の脚本は誰が書いたのかというと、さっき言ったジョーダン・ピール監督自身が書いてるんです!

その年の脚本賞にノミネートされた他の作品を見ても、どれも脚本が良かった作品ばかりなんですよね。

特に『スリー・ビルボード』は脚本が良く出来ていてこの作品が脚本賞を獲るだろうと言われてたぐらいです。

 

じゃあどうしてこの作品が脚本賞を獲れたのかって?

 

それはもちろん脚本自体の出来が良いってのもありますよ、とにかく無駄がないですからね。

しかしそれ以上に時代に後押しされたというのが大きいと思います。

アカデミー賞というのは時代性によって追い風や逆風が吹くというところで、どの作品がどの賞を獲ると完璧には予想しきれないところが面白いんですよね。

 

ではさっき言った時代の後押しとは何なのかという前に、そもそもジョーダン・ピール監督がなぜ今作のような題材で映画を作ろうと思ったのかをちょこっと説明すると分かりやすいかもしれません!

2009年にアフリカ系アメリカ人として初めてバラク・オバマが第44代アメリカ合衆国に就任してからしばらく、オバマ政権が比較的安定してる時期にピール監督はこの作品を考えたようです。 

その頃のアメリカの雰囲気に対してピール監督「黒人が大統領になっただけでまるで人種差別も無くなったかのような空気」に疑問を感じていたようで、日常の中には人種差別がまだ沢山あるのに皆がそれを見て見ぬ振りをしている状況に少しでも刺激になればとこの作品を作り始めたんです。

そしてその数年後にドナルド・トランプ大統領が誕生して、アメリカのトップが差別的発言を振り撒いて国民同士の対立を半ば煽ったことでで。、ピール監督の言っていたオバマ政権の頃の「空気」を壊してしまいました。

これによって選挙でオバマ大統領の選んだことでアメリカは進歩したように見えて実はこんなに差別が溢れている現実がどんどん浮き彫りになっていったんです。

まさにピール監督が疑問を投げかけようと思って作った内容と時代性が皮肉にも重なってしまったんですね。

そういった時代性との重なりと、ピール監督の社会の先を見る確かな目というのに【脚本賞】が送られたと思ってもいいかもしれませんね。 

あと、その時代性と重なりを多くの人が感じたからこそこの映画が豪華キャストも出てない低予算映画なのに全米で大ヒットした要因の1つになってるのかもしれません。

 

この映画、2度目が更に面白い!

こいういうネタバレ厳禁タイプの映画って、物語の展開のひねりの部分を知ってしまってるから2回目観ても面白くないんでしょ?と思う人も多いかもしれませんね。

 

普通みんなそんなもんでしょ、って?

 

分かります。でもこの映画は2度目がもっと面白くなるんですよ!

もちろん1度目の鑑賞と同じように物語の展開だけを追って観たらそれは同じ事なので退屈に感じるかもしれません。

でも1度観た人は全てを知ってるんです、最初から企みを暴いてやろうという目線で見ると全然違う楽しみ方が出来るんです。

試しにそういう目線で観て下さい。

 

もはや最初っから、「そうとしか見えない」から。笑

 

これは脚本の良さにも関係するかもしれませんが、とにかくこの映画は物語の最初から主人公が決定的な事態に陥るまでの間、さらにその先も、一見何も起こっていないように見えて実はこの映画の正体についての伏線と暗示が初めから至る所に散りばめられいるんです!

 

例えばとある登場人物のファーストカット(1番最初に作品画面に登場した場面)、沢山の中から「何か」を物色する人であるというのがそこですでに暗示されてます。

 

オープニングクレジットと一緒にクリスの部屋が映される場面では、クリスの部屋に飾られてある大きな写真の中にはすでにこの後に起こることを暗示してるような写真が混ざってます。

 

登場人物達の会話も2度目の鑑賞時はまた別の意味に聴こえてきてます。

些細な会話も、そうなる事を見越して色々な確認や心配をしてるようにしか聞こえませんね。

劇中で主人公が言われる「ゲットアウト!」というセリフも2度目の鑑賞時はきっと違う意味に聞こえるはずです。

 

ローズの実家に車で向かう途中に鹿を轢き殺してしまう場面も、主人公がそのまま息絶えてく鹿を見て亡くなった母親に関するトラウマを連想するという物語上の意味もありますが、黒人男性に対するスラングや、狩(ハント)をされる側(されてきた黒人の)立場だったり、あ複数の意味合いもあるようです。

 

劇中で重要な役割を果たす綿も、たまたま綿を作品に出した訳じゃありません、もちろんこれは黒人の多くが昔は綿花栽培で奴隷として働かされていた歴史が込められています。

この映画の中では鹿や綿がかつての酷い黒人差別という背景が暗示された道具であること、同時にこの2つの道具は主人公の抱えるトラウマの象徴であること、それを踏まえた上で2度目鑑賞した時には、終盤その使い方にカタルシス(鬱憤を解放することによる浄化)を感じるはずです!

ネタバレにならないように分かりやすいところを取り上げて言いましたが、これだけじゃありません。

まだまだ暗示や伏線だらけなんです。

きっと色々と気付くと思います。

せっかく2度楽しめる映画なんです、どうせなら味わいたいじゃないですか。

伏線を張った物語に興味があるとか、勉強したい人にもこれはちょうどいい作品だと思いますね、ムダなく伏線と暗示が埋合ってるんで。

 

おわりに

ここまできたら観たことない人はとりあえず観てみようかと、1度観た人もまた観てみようと思ったわじゃないでしょうか。

 

まあ、考えとくって?

 

最初の素直さはどこ行ったんですか!笑

 

それでもいいんです、考えて、なんだか気になって観てくれればそれで嬉しいですね。

あとジョーダン・ピールという監督さんも覚えておくと今後その名を見る機会も多くなるかもしれませんよ!

 

と、まあなんか分かったような事を色々と言ってきましたが、僕がこの作品から受け取ったメッセージなんて「彼女よりも友達を大事にすべし!」でしたからね。

 

観る目が無いって!?

 

すみませんでしたー!