逆走!アカデミー賞

米・アカデミー賞を何処までも逆走していく、少しのネタバレと少しの熱さの、ゆるい映画紹介ブログです。

映画『メッセージ』 静かで深いところから感動が流れてくる新しいSF映画【第89回アカデミー賞】

 

『メッセージ』

 

 

 

 

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いや〜これもかなり観応えのある特殊なSF映画でしたよ〜。

ある日、世界中に12個の巨大な“ばかうけ”が出現し、人類にメッセージを送ってきます。

それは「3日以内に全ての我を食べ尽くさねば、地球を滅す」という理不尽なものでした。

そして世界中の食いしん坊達が立ち上がるのです。

もちろん日本政府も北海道に出現したばかうけ対処すべく日本中の食いしん坊に呼びかけて全力を挙げてバックアップします。

そして、なんとか世界中の巨大ばかうけを食い尽くして(アメリカが1番早かったようです)地球を救った英雄達の影響で世の中の価値観がひっくり返り、良く食べるイメージの肥満が最もイケてる体型となり、雑誌の表紙やドラマの主役、パリコレの舞台に映画まで、書店に行けば「肥満になれる10のステップ」などの本がずらりと並び、やがて町には肥満が溢れかえります。

それにともないインフラの再整備が進み必要な公共事業が盛んになり、民間では新しい産業が次々生まれて、世界経済が右肩上がりに伸びに伸びハッピー極まりないことになります。 

 

しかしここで問題が発生します。

 

食料が足りなくなったのです。

 

普通考えたら分かるだろうと僕たち観客は突っ込みたくなりますが、とにかく需要に対して供給が圧倒的に弱くなり世界中で食料不足が深刻になります。

そして食料品のハイパーインフレが起こり、ファストフードのマクドなんちゃらなどはチーズバーガー1個が4000円超えて、しかも後に肉の単価が高すぎるのでパティ(ハンバーグ)の部分に段ボールを油でこねくり混ぜたものを焼いて代用していたことが発覚し、大騒ぎになるかと思いきや「食べれるなら段ボールでもいい」といって皆が段ボールを街中探し回る方向に発展する始末。

そして、とうとう少ない食料を巡って人類は争うようになり、今までの映画史のなかでも最も暑苦しい戦いがはじまるのでし…嘘です。

はい、嘘です。

 

ごめんなさい嘘ついて…

え、最初から知ってたって?

 

僕はずっと手のひらで転がされていたってことですか?

ちくしょう!でも楽しかったですよ、バカなことを延々と想像しまくるのも。

 

 

 

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なんですかこの無駄に高いクオリティ、何も知らない外国人なら信じちゃうんじゃないですかね。

 

 

 

 

まあでもこんな日本のおふざけに乗ってくれたヴィルヌーヴ監督の動画でも貼っつけておきます。


宇宙船がばかうけソックリ!『メッセージ』監督からのメッセージ映像

 

 

はい、ちゃんと紹介しますね。

 

 

 

『メッセージ』

 

第89回アカデミー賞(2017)

【音響編集賞】

 

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監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

脚本:エリック・ハイセラー

音楽:ヨハン・ヨハンソン

撮影:ブラッドフォード・ヤング

編集:ジョー・ウォーカー

 

原作:テッド・チャン「あなたの人生の物語」

 

 

 

 

さて!

まあSF映画なんだけど、いわゆるファーストコンタクトものというやつです。

それは何かって?

地球以外の星の文明と人類が初めて接触する話ですね。

そうそう定番のやつです!やっぱ人気ですし、ワクワクするじゃないですか。

でも定番だけに逆に新鮮味を感じさせるのは結構大変なんですよね、しかしこの映画はなかなか新しいんです!

その辺は後で言いますね。

 

始まりは、ある日突然のこと、突如として世界中に謎の宇宙船が現れます。

その数は12、ちなみに日本の北海道にも現れます!

しかし世界12箇所で、なぜその場所なのか関連性もなく、何の為に地球に訪れたのか理由も分かりません。

 

 

まずこの映画が素晴らしいのは、まあ美しいんですよ映像が。

 

SF映画でよくあるCGで全て作り込まれた架空の美しい景色とはまた違って、本物のアメリカの大自然の中に明らかに異常な物体がそこにある、この本物とCGとのコントラストがすごい画面を美しいものにしています。

 

そしてその異常な物体、宇宙船ですね。

それが現れてから程なくして、アメリカの言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)の元へ、アメリカ軍大佐のウェバー(フォレスト・ウィテカー)が訪ねてきます。

力を貸して欲しいと。

 

そして宇宙船の中へ入って宇宙人と接触することになるんだけど、そこで物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)と共にあらゆる角度から宇宙人から情報を引き出す作戦を与えられます。

そしてもちろん1番重要な情報は何の目的で地球に来たのか、です。

 

そこからは全く未知の存在である宇宙人の言葉や考えを人間が解読していく、この作品は言語のSF映画だったのです。

 

こんなSF映画は見たことないですよ。

 

しかし、宇宙人と、うぉりゃー戦争じゃー!というのを期待すれば肩透かしを食らった感じになるかもしれません。

しかしそういう派手なドンパチ以外の面白さに溢れた、とても大人のSF映画ですね。

 

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なんじゃこの美しさ…!

 

 

まず宇宙船の中には、宇宙人というか生物ですね、それが2体います。

胴体にイカみたいに7本の足が付いてるのでヘプタポッド(7本足)という名前で呼ばます。

そう、いかにもですよね!足が沢山付いていてって、でも面白いことにこのヘプタポッドには生物として前も後ろも無いんですよ。

前に進んだら、同時に後ろに下がっていることにもなるという、説明しづらいですね。

 

そこで、このヘプタポッドを知るヒントになるのが文字なんです。

 

ヘプタポッドは足から墨汁みたいなもを出して空中に文字を書くことができます。

その文字といのが筆で丸を書いたような字で、どうやら1個の丸の中に色々な意味が詰まった1つの文章になっているらしいことが分かります。

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こんな文字を出してきます。

 

 

これは表意文字と呼ばれる文字で、実は僕たちには馴染み深い種類の文字でもあるんです。

 

それは漢字です!

 

例えば表音文字と呼ばれる音で表す文字のアルファベットは"A”とか“B”とか1文字だけだと何の意味もなさないですよね。

しかし漢字は“鳥”とか“怒”とか1文字だけで意味が分かる、絵を見るのに近い感覚ですよね。

ヘプタポッドの文字はこの漢字のような表意文字が超絶進化したものだと思ってもらえれば良いかと思います。

そして言語のSFとしてもう1つ重要なのは映画の中でもチラッと出てきますが、“サピア=ウォーフの仮説”というのがあります。

これは、その人が使っている言語によってその人の思考も決まるというものですね。

大雑把に言うと英語の順序だと結論が真っ先にきてその後に説明が続いて、日本語の順序だとまず説明から始まって結論は最後にくる(もしくは結論なしでも伝わる)、その言語の違いが欧米人と日本人の性格的な違いにも繋がってるんじゃないの?ってことですね。

全てが必ずしも当てはまるわけじゃないと思うけど、ちょっと分かる気もしますよね!

 

つまり言語を学ぶってことは、その言語が持つ考え方も学んでるってことにもなるんですよ。

そこがこの映画では大変重要な部分になっていくのです。

 

そして、その文字を頼りにルイーズ達は少しずつヘプタポッドが何の目的で地球に来たのかを探ろうとしていきます。

他の世界各地の宇宙船、それぞれの国 ヘプタポッドとはどういう接触の仕方をしているのか、その国の反応は、そしてこの物語は何処へ向かっていくのか、ぜひその目で確かめて欲しいですね。

 

原作のテッド・チャンの「あなたの人生の物語」もちゃんと読みましたよ。

この映画は原作の映像化としてもとても良い出来!その上で原作の方はヘプタポッド

に関係するディテールや考察がより掘り下げられてました。

 

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ルイーズとハンナ

 

 

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物理学者イアンを演じたジェレミー・レナー。

個人的には『ザ・タウン』『ハート・ロッカー』のようなクレイジーな役の時が好きだけど、このインテリ姿もなかなか良かったですよ。

 

 

ああそれと、この作品がアカデミー賞【音響編集賞】を受賞したことも触れとかないといけませんね。

【音響編集賞】と言われても皆あまりピンとこないんじゃないでしょうか?

映画って役者のセリフ以外の音は基本的には後から音作りの職人によって付けられてるんです。

殴った音、銃の音、ドアを開ける音から足音まで、色んな音です!

でも、再現が難しい音ってあるじゃないですか戦場で銃弾が飛び交う音とか、あとこの映画のようなSF作品みたいに現実には存在しない音とか。

分かりやすく言うとスターウォーズのライトセーバーの「ヴゥーン」って音とか、R2D2の「ピポパピポペピ」みたいな声とか、現実に存在しないから作り出さないといけないわけです。

 

で、この映画でいうところのヘプタポッドちゃんですよ。

実際には存在しない生物ですからね、その喋る音を聞いたとき、観客にちゃんとそれだ!っと思わせるものを見事に作り出したってことですよ。

あとちょいちょい流れるヘプタポッドのテーマ曲なんかも、あまり聞いたことないような音を使って作ってあったり、そういう音響編集のことろにも耳を傾けてこの映画を観るのも面白いですね。 

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ヘプタポッドちゃん!このキモい形が人間とは全く違う次元の生き物だということ感じさせてくれます。

 

 

この映画、非現実を描いたSFですが決して現実と無関係じゃなく、僕たちにとっても大事なことが沢山含まれていたように思います。

見知らぬ相手だからこそちゃんと理解しようとする、コミュニケーションの基本ですよね。

そしてちゃんと理解出来ているのか、伝わっているのか、コミュニケーションその難しさ、根気が要ることも感じさせられる。

 

そうやって序盤の方はコミュニケーション、言語についてのSF映画

 

中盤は、時間についてのSF映画へ。

 

そして終盤は、何についてのSF映画になっているのか。

 

 

そこを観て欲しいです。

 

僕はやはりそこに感動しました、科学が発達しても使うのは人間、その動機の感情だけは進化も退化もなく普遍的、だからSF映画として描く価値のある作品にちゃんとなってました。

 

そして僕たち人間の意思とは何か、SF映画の絵空事ではなく、宇宙人が来なくても近い将来に必ず僕ら人間が直面する課題だと思うとやはり観ておくべき映画だと思います。

 そして邦題じゃなく元々のタイトルである『ARRIVAL』(到着)の意味が分かった時に、何とも言えない余韻を残すのです。

またそれが良いんですよね。

 

 

是非ご覧ください!

 

 

 


映画「メッセージ」予告編