逆走!アカデミー賞

米・アカデミー賞を何処までも逆走していく、ネタバレと少しの熱さの、ゆるい映画紹介ブログです。

映画『メッセージ』 静かで深いところから感動が流れてくる新しいSF映画【第89回アカデミー賞】

 

『メッセージ』

 

 

 

 

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いや〜これもかなり観応えのある特殊なSF映画でしたよ〜。

ある日、世界中に12個の巨大な“ばかうけ”が出現し、人類にメッセージを送ってきます。

それは「3日以内に全ての我を食べ尽くさねば、地球を滅す」という理不尽なものでした。

そして世界中の食いしん坊達が立ち上がるのです。

もちろん日本政府も北海道に出現したばかうけ対処すべく日本中の食いしん坊に呼びかけて全力を挙げてバックアップします。

そして、なんとか世界中の巨大ばかうけを食い尽くして(アメリカが1番早かったようです)地球を救った英雄達の影響で世の中の価値観がひっくり返り、良く食べるイメージの肥満が最もイケてる体型となり、雑誌の表紙やドラマの主役、パリコレの舞台に映画まで、書店に行けば「肥満になれる10のステップ」などの本がずらりと並び、やがて町には肥満が溢れかえります。

それにともないインフラの再整備が進み必要な公共事業が盛んになり、民間では新しい産業が次々生まれて、世界経済が右肩上がりに伸びに伸びハッピー極まりないことになります。 

 

しかしここで問題が発生します。

 

食料が足りなくなったのです。

 

普通考えたら分かるだろうと僕たち観客は突っ込みたくなりますが、とにかく需要に対して供給が圧倒的に弱くなり世界中で食料不足が深刻になります。

そして食料品のハイパーインフレが起こり、ファストフードのマクドなんちゃらなどはチーズバーガー1個が4000円超えて、しかも後に肉の単価が高すぎるのでパティ(ハンバーグ)の部分に段ボールを油でこねくり混ぜたものを焼いて代用していたことが発覚し、大騒ぎになるかと思いきや「食べれるなら段ボールでもいい」といって皆が段ボールを街中探し回る方向に発展する始末。

そして、とうとう少ない食料を巡って人類は争うようになり、今までの映画史のなかでも最も暑苦しい戦いがはじまるのでし…嘘です。

はい、嘘です。

 

ごめんなさい嘘ついて…

え、最初から知ってたって?

 

僕はずっと手のひらで転がされていたってことですか?

ちくしょう!でも楽しかったですよ、バカなことを延々と想像しまくるのも。

 

 

 

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なんですかこの無駄に高いクオリティ、何も知らない外国人なら信じちゃうんじゃないですかね。

 

 

 

 

まあでもこんな日本のおふざけに乗ってくれたヴィルヌーヴ監督の動画でも貼っつけておきます。


宇宙船がばかうけソックリ!『メッセージ』監督からのメッセージ映像

 

 

はい、ちゃんと紹介しますね。

 

 

 

『メッセージ』

 

第89回アカデミー賞(2017)

【音響編集賞】

 

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監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

脚本:エリック・ハイセラー

音楽:ヨハン・ヨハンソン

撮影:ブラッドフォード・ヤング

編集:ジョー・ウォーカー

 

原作:テッド・チャン「あなたの人生の物語」

 

 

 

 

さて!

まあSF映画なんだけど、いわゆるファーストコンタクトものというやつです。

それは何かって?

地球以外の星の文明と人類が初めて接触する話ですね。

そうそう定番のやつです!やっぱ人気ですし、ワクワクするじゃないですか。

でも定番だけに逆に新鮮味を感じさせるのは結構大変なんですよね、しかしこの映画はなかなか新しいんです!

その辺は後で言いますね。

 

始まりは、ある日突然のこと、突如として世界中に謎の宇宙船が現れます。

その数は12、ちなみに日本の北海道にも現れます!

しかし世界12箇所で、なぜその場所なのか関連性もなく、何の為に地球に訪れたのか理由も分かりません。

 

 

まずこの映画が素晴らしいのは、まあ美しいんですよ映像が。

 

SF映画でよくあるCGで全て作り込まれた架空の美しい景色とはまた違って、本物のアメリカの大自然の中に明らかに異常な物体がそこにある、この本物とCGとのコントラストがすごい画面を美しいものにしています。

 

そしてその異常な物体、宇宙船ですね。

それが現れてから程なくして、アメリカの言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)の元へ、アメリカ軍大佐のウェバー(フォレスト・ウィテカー)が訪ねてきます。

力を貸して欲しいと。

 

そして宇宙船の中へ入って宇宙人と接触することになるんだけど、そこで物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)と共にあらゆる角度から宇宙人から情報を引き出す作戦を与えられます。

そしてもちろん1番重要な情報は何の目的で地球に来たのか、です。

 

そこからは全く未知の存在である宇宙人の言葉や考えを人間が解読していく、この作品は言語のSF映画だったのです。

 

こんなSF映画は見たことないですよ。

 

しかし、宇宙人と、うぉりゃー戦争じゃー!というのを期待すれば肩透かしを食らった感じになるかもしれません。

しかしそういう派手なドンパチ以外の面白さに溢れた、とても大人のSF映画ですね。

 

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なんじゃこの美しさ…!

 

 

まず宇宙船の中には、宇宙人というか生物ですね、それが2体います。

胴体にイカみたいに7本の足が付いてるのでヘプタポッド(7本足)という名前で呼ばます。

そう、いかにもですよね!足が沢山付いていてって、でも面白いことにこのヘプタポッドには生物として前も後ろも無いんですよ。

前に進んだら、同時に後ろに下がっていることにもなるという、説明しづらいですね。

 

そこで、このヘプタポッドを知るヒントになるのが文字なんです。

 

ヘプタポッドは足から墨汁みたいなもを出して空中に文字を書くことができます。

その文字といのが筆で丸を書いたような字で、どうやら1個の丸の中に色々な意味が詰まった1つの文章になっているらしいことが分かります。

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こんな文字を出してきます。

 

 

これは表意文字と呼ばれる文字で、実は僕たちには馴染み深い種類の文字でもあるんです。

 

それは漢字です!

 

例えば表音文字と呼ばれる音で表す文字のアルファベットは"A”とか“B”とか1文字だけだと何の意味もなさないですよね。

しかし漢字は“鳥”とか“怒”とか1文字だけで意味が分かる、絵を見るのに近い感覚ですよね。

ヘプタポッドの文字はこの漢字のような表意文字が超絶進化したものだと思ってもらえれば良いかと思います。

そして言語のSFとしてもう1つ重要なのは映画の中でもチラッと出てきますが、“サピア=ウォーフの仮説”というのがあります。

これは、その人が使っている言語によってその人の思考も決まるというものですね。

大雑把に言うと英語の順序だと結論が真っ先にきてその後に説明が続いて、日本語の順序だとまず説明から始まって結論は最後にくる(もしくは結論なしでも伝わる)、その言語の違いが欧米人と日本人の性格的な違いにも繋がってるんじゃないの?ってことですね。

全てが必ずしも当てはまるわけじゃないと思うけど、ちょっと分かる気もしますよね!

 

つまり言語を学ぶってことは、その言語が持つ考え方も学んでるってことにもなるんですよ。

そこがこの映画では大変重要な部分になっていくのです。

 

そして、その文字を頼りにルイーズ達は少しずつヘプタポッドが何の目的で地球に来たのかを探ろうとしていきます。

他の世界各地の宇宙船、それぞれの国 ヘプタポッドとはどういう接触の仕方をしているのか、その国の反応は、そしてこの物語は何処へ向かっていくのか、ぜひその目で確かめて欲しいですね。

 

原作のテッド・チャンの「あなたの人生の物語」もちゃんと読みましたよ。

この映画は原作の映像化としてもとても良い出来!その上で原作の方はヘプタポッド

に関係するディテールや考察がより掘り下げられてました。

 

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ルイーズとハンナ

 

 

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物理学者イアンを演じたジェレミー・レナー。

個人的には『ザ・タウン』『ハート・ロッカー』のようなクレイジーな役の時が好きだけど、このインテリ姿もなかなか良かったですよ。

 

 

ああそれと、この作品がアカデミー賞【音響編集賞】を受賞したことも触れとかないといけませんね。

【音響編集賞】と言われても皆あまりピンとこないんじゃないでしょうか?

映画って役者のセリフ以外の音は基本的には後から音作りの職人によって付けられてるんです。

殴った音、銃の音、ドアを開ける音から足音まで、色んな音です!

でも、再現が難しい音ってあるじゃないですか戦場で銃弾が飛び交う音とか、あとこの映画のようなSF作品みたいに現実には存在しない音とか。

分かりやすく言うとスターウォーズのライトセーバーの「ヴゥーン」って音とか、R2D2の「ピポパピポペピ」みたいな声とか、現実に存在しないから作り出さないといけないわけです。

 

で、この映画でいうところのヘプタポッドちゃんですよ。

実際には存在しない生物ですからね、その喋る音を聞いたとき、観客にちゃんとそれだ!っと思わせるものを見事に作り出したってことですよ。

あとちょいちょい流れるヘプタポッドのテーマ曲なんかも、あまり聞いたことないような音を使って作ってあったり、そういう音響編集のことろにも耳を傾けてこの映画を観るのも面白いですね。 

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ヘプタポッドちゃん!このキモい形が人間とは全く違う次元の生き物だということ感じさせてくれます。

 

 

この映画、非現実を描いたSFですが決して現実と無関係じゃなく、僕たちにとっても大事なことが沢山含まれていたように思います。

見知らぬ相手だからこそちゃんと理解しようとする、コミュニケーションの基本ですよね。

そしてちゃんと理解出来ているのか、伝わっているのか、コミュニケーションその難しさ、根気が要ることも感じさせられる。

 

そうやって序盤の方はコミュニケーション、言語についてのSF映画

 

中盤は、時間についてのSF映画へ。

 

そして終盤は、何についてのSF映画になっているのか。

 

 

そこを観て欲しいです。

 

僕はやはりそこに感動しました、科学が発達しても使うのは人間、その動機の感情だけは進化も退化もなく普遍的、だからSF映画として描く価値のある作品にちゃんとなってました。

 

そして僕たち人間の意思とは何か、SF映画の絵空事ではなく、宇宙人が来なくても近い将来に必ず僕ら人間が直面する課題だと思うとやはり観ておくべき映画だと思います。

 そして邦題じゃなく元々のタイトルである『ARRIVAL』(到着)の意味が分かった時に、何とも言えない余韻を残すのです。

またそれが良いんですよね。

 

 

是非ご覧ください!

 

 

 


映画「メッセージ」予告編

 

映画『ムーンライト』 月明かりの下でだけ自分自身になれる【第89回アカデミー賞】

 

 

『ムーンライト』

 

 

第89回アカデミー賞(2017)

☆【作品賞】☆

☆【助演男優賞】

☆【脚色賞】

 

 

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監督・脚本:バリー・ジェンキンス

原作・原案:タレル・アルヴィン・マクレイニー

音楽:ニコラス・ブリテル

撮影:ジェームズ・クラストン

編集:ナット・サンダース

   ジョイ・マクミロン

製作総指揮:ブラッド・ピット

 

 

 

いや〜これかあ、1回目から来ましたねえ。

と言うかね、どう書いていったら良いものかイメージがまだ定まってないんでとりあえず友達に紹介するような感じでやっていきますね。

いやこれ、すごい良い作品なんだけど、なかなか万人に興味を持ってもらえるタイプの作品じゃないんですよね。

癖もありますしね。

でもまさにこういう映画こそ紹介したい、このブログの1回目に相応しい作品です!

 

まずちょっと、いきなり内容とは関係ない事ですが、2017年の第89回アカデミー賞の授賞式でちょっとしたハプニングがありましたね。

この『ムーンライト』が作品賞を受賞したんだけど、おそらく受賞式の運営サイド(正確には会計事務所)のミスで違う封筒がプレゼンターに渡され作品賞のところで最初『ラ・ラ・ランド』と読み上げられてしまい、同キャストやスタッフが壇上に上がって喜びまくっている途中で間違いだと分かって騒然となりました。

この作品賞って20部門以上あるアカデミー賞の部門の中でも最も重要で、延々半日以上かけて開催されてる派手な授賞式の中でも発表が大トリだから皆んなの注目が1番集まる、そこで要は人的ミスってやつですよ、やらかしちゃったもんだからもう、ね…、うっかり人的ミス経験者なら分かるでしょう?想像するだけでも震えてきます。

きっと誰かのクビが飛んだことでしょう…。((((;゚Д゚)))))))

 

いやそれで、その時に僕はまだ『ムーンライト』観てなかったから「えーなんだよラ・ラ・ランドでいいじゃん!」とかついつい思ってたんだけど、いざ観るとやっぱ良い作品でさ、そして納得したと同時に「アメリカ映画界はこの映画を作品賞に選んだのか!」という意外な驚きもありました。

 

 

さて本題の方に入りますけど。

 

最初の方に表示されてる表紙のポスター画像に写っているのが主人公なんですけど、見て何か気づきました?

黒人だ。

まあそうだけど、その黒人男性の主人公の顔がスライスされたピザのごとく3つに分かれてますよね。

これで分かるように主人公の少年期・思春期・青年期の3つの異なる年代をそれぞれ3人の役者が演じて描いた映画なんです。 

そして、一般的な映画と少し変わっているのは、この映画は三部構成と言って完全に3つの章に区切られてるんです。

 

まず最初は《リトル》と題名の付いた、少年期の章。

次は《シャロン》と題名の付いた思春期の章。

最後は《ブラック》と題名の付いた青年期の章。

 

この3つの章を通して主人公の変化を延々と追っていく映画なんですね。

 

 

じゃあ主人公はどんな人かって?

 

主人公の本名はシャロンという名前で、アメリカのマイアミ郊外の貧困地域

でシングルマザーの母親と暮らす黒人の男の子です。

 

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そして彼はゲイです。

その上、いじめからなんとか逃げて家に帰れば帰ったで母親がドラッグに溺れてるんですよ。

つまりこの映画って

黒人の貧困層の街でその黒人達の中からも差別されるゲイに生まれ、その上ヤク中の母親からも疎まれる何処にも居場所がない黒人少年というマイノリティ中のマイノリティ主人公なんです。

 

え、興味ないって言いました?

いやいやそんなこと言わないで、ね!

むしろそういう人にこそ観て欲しいんです。

て言うか興味ないとか…

これ、1回目ですよ!?笑

 

まあそう思う気持ちも分からなくはないですよ。

自分の状況とかけ離れているとか、あとは貧困問題にドラッグや性差別など社会問題が映画を観る前から説教臭そうだと感じるのかもしれませんね。

僕も観る前はそういった社会問題をお題目にした映画かなと思ってたんだけど、違いました。

もちろんそういった側面もあるんだけどむしろもっと普遍的な、人間アイデンティティーを巡る話なのです。

そして“同時”にとても繊細な極上の恋愛映画でもありましたね。

 

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ちなみに、そんなつらい状況のシャロンには誰も味方がいないのかって?

 

います。

 

幼い主人公にとってとても重要な人がいるのです。

それは居場所のない主人公が逃げ込んだ廃墟で偶然出会ったフアンという人物です。

このフアンという人物はドラッグディーラーで、しかもこの辺の縄張りを仕切ってるっぽいんです。

 

でも、このフアンという男によってシャロンは初めて自分の存在を肯定されるのです。

 

そのフアンに海で泳ぎを教えてもらうシーンがあるんだけど、手で支えられながらプカ〜っと海に浮かべてもらって「地球を感じるか?今お前は地球の真ん中にいるんだ」という言葉と共に世界と自分の繋がり、つまりこの世界に自分が居ても良いんだとちゃんと“体感”させます。

そのあと浜辺で「お前のことはお前が決めろ、周りに決めさせるな」と言われます。そうやって海でシャロンはとても大事な言葉をフアンからもったのです。

この無条件の肯定、本当なら母親がしてあげなければいけないことですよね…。

 

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いや〜これ良いシーンでした。

 

 

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そのうちゲイだと自分で認識することになるチビ助シャロンに向けて贈られた大事な言葉!

 

 

そして良くも悪くもシャロンにとってこのフアンの存在がどれほど大きかったのかというのが、3章目《ブラック》を観ればもうね…分かるのです。

 

そのフアンを演じたマハーシャラ・アリという役者が、アカデミー賞【助演男優賞】を獲ったんだけど、納得。

それぐらい存在感のある役柄でした。

 

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他には誰かいるかって?  

 

もちろん!忘れちゃいけない登場人物がいます。

ケヴィンです。

彼はシャロンの初恋の相手なんだけど、彼もとても重要な登場人物です。

シャロンのアイデンティティーを巡る話とケヴィンに対する恋心の行方、この2つは同列で切り離せないんですよ。

 

 

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こちらが照れてしまうほど繊細な気持ちのやりとり。

 

 

そして、この映画の面白いなと思うところの1つに、シャロンを取り巻く厳しい現実をこれだけリアルに描きながらもアート映画的でもあるんです。

例えばこの映画のテーマカラーであるが画面のどこかに必ず入れているのを始め色彩のコントロールや映像を作りや音楽の使い方など美しいものと貧困や差別などが同居する独特の雰囲気があります。

 

 

あと、三部構成と言っても単に章が3つに分かれてるだけじゃなくて、ちゃんと特性を活かした作品なんで、その違いや変化も味わってほしいです。

 

例えばどんな?

 

そうですねえ、じゃあ例えばこの映画のテーマカラーの青の他に章ごとにサブカラーがあって、1章《リトル》はサブカラーも青、2章《シャロン》は黄色、3章《ブラック》は黒、と分かれてます。

そして、わざわざ色を分けといてなんの意味もないなんてことは映画にありません。

その青と黄と黒を海と月と空に例えて1つにしたらどんな情景が浮かびますか?

そう!月明かりの海辺です!この映画にとって大事なモチーフですよね。

 

あとこの映画にはシャロンのテーマ曲があります、3つの章ごとにそのテーマ曲のアレンジが変化しています。

そのアレンジされた音色とシャロンの内面が完全にリンクするようになっているのでその辺も是非味わってほしいです!

そして章が切り替わった時に、一気に時間が飛ぶのにあまり説明されない感じ、その章と章の“間”を想像する面白さも味わって欲しいですね。

 

 

長々と書いちゃいましたね。

 

日本の某ベテラン大御所バンドの初期の方の曲のサビにある“知らぬ間に築いてた、自分らしさの檻の中でもがいてるなら”という歌詞があるけど、この映画って要は“男らしさの檻の中でもがいている男の話”なんですよ。

でも別にこれ、女らしさとか、優等生らしさとか、体育会系らしさとか、大人らしさ、不良グループらしさ、なんでもいいですけど、そういう“〇〇らしさの檻の中”でもがいてる人って沢山いるんじゃないですか?

僕だって少なからずありますよ。

だからこの映画でその檻から解放されたシーンがすごく尊く思えるんです。

ああ、良いなあと思えるんです。

じゃあこの映画は、これからはそんな檻を取っ払って生きて行こうぜ!って言っている作品なのか、僕は違うと思っています。

生まれた環境や自分が属する集団で、それが出来ないから、ボロボロに傷付くから、知らぬ間に自ら檻を築いたんです。

檻に守られることもあるから。

 

でも檻の中が狭くてもがいてしまう時、どうしても苦しい時、どうすればいい?

 

シャロンにとって海は特別な場所です。映画の中で、シャロンは海にいる時だけ自分を解放できました。

 

僕はこの映画のラストは、

 

あなたの海は何処ですか?

 

いや、

 

あなたの海はありますか?

 

と、問いかけられたような気がしました。

 

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べつに三部構成だからといって伏線がどうだという映画じゃないし、難しいことは話は何もないし、その代わり何かが解決するわけでもない、でもシャロンの背中を追うカメラのように寄り添って観ることができたならとても穏やかで深い感動に包まれる映画だと思います。

 

特に自分が今いる場所と自分の内面とのギャップに悩んでいる人は1度は観ておいて損は無い映画じゃないでしょうか!

 

是非ご覧ください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第89回アカデミー賞 (2017年)全受賞作品&ノミネート作品一覧

※ 青文字をタッチするとその映画の紹介記事に飛べます

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★作品賞★

【受賞】ムーンライト」

 

〜以下ノミネート〜

「メッセージ」

●「フェンス」

●「ハクソー・リッジ」

●「最後の追跡」

●「ドリーム」

●「ラ・ラ・ランド」

●「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

●「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

 

★監督賞★

【受賞】デイミアン・チャゼル

「ラ・ラ・ランド」

〜以下ノミネート〜

● メル・ギブソン

「ハクソー・リッジ」

● バリー・ジェンキンス

「ムーンライト」

● ケネス・ロナーガン

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

● ドゥニ・ヴィルヌーヴ

「メッセージ」

★主演男優賞★

【受賞】ケイシー・アフレック

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

〜以下ノミネート〜

● アンドリュー・ガーフィールド

「ハクソー・リッジ」

● ライアン・ゴズリング

「ラ・ラ・ランド」

● ヴィゴ・モーテンセン

「はじまりへの旅」

● デンゼル・ワシントン

「フェンス」

 

★主演女優賞★

【受賞】エマ・ストーン

「ラ・ラ・ランド」

〜以下ノミネート〜

● イザベル・ユペール

「エル ELLE」

● ルース・ネッガー

「ラビング  愛という名前のふたり」

● ナタリー・ポートマン

「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」

● メリル・ストリーム

「マダム・フローレンス!夢見るふたり」

 

★助演男優賞★

【受賞】マハーシャラ・アリ

「ムーンライト」

〜以下ノミネート〜

● ジェフ・ブリッジス

「最後の追跡」

● ルーカス・ヘッジ

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

● デーヴ・パテール

「LION/ライアン〜25年目のただいま〜」

● マイケル・シャノン

「ノクターナル・アニマルズ」

 

★助演女優賞★

【受賞】ヴィオラ・デイヴィス

「フェンス」

〜以下ノミネート〜

● ナオミ・ハリス

「ムーンライト」

● ニコール・キッドマン

「LION/ライアン〜25年目のただいま〜」

● オクタヴィア・スペンサー

「ドリーム」

● ミシェル・ウィリアムズ

「マンチェスター・バイ・ザシー」

 

★脚本賞★

【受賞】「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

ケネス・ロナーガン

〜以下ノミネート〜

●「最後の追跡」

テイラー・シェリダン

●「ラ・ラ・ランド」

デイミアン・チャゼル

●「ロブスター」

ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ

●「20センチュリー・ウーマン」

マイク・ミルズ

 

★脚色賞★

【受賞】ムーンライト」

バリー・ジェンキンス、タレル・アルビン・マクレイニー

〜以下ノミネート〜

「メッセージ」

エリック・ハイセラー

●「フェンス」

オーガスト・ウィルソン

●「ドリーム」

セオドア・メルフィ、アリソン・シュローダー

●「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

ルーク・デイビス

 

★撮影賞★

【受賞】「ラ・ラ・ランド」

リヌス・サンドグレン

〜以下ノミネート〜

「メッセージ」

ブラッドフォード・ヤング

●「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

グレイグ・フレイザー

「ムーンライト」

ジェームズ・ラクストン

●「沈黙  サイレンス」

ロドリゴ・ブリエト 

 

★編集賞★

【受賞】「ハクソー・リッジ」

ジョン・ギルバート

〜以下ノミネート〜

「メッセージ」

ジョー・ウォーカー

●「最後の追跡」

ジェイク・ロバーツ

●「ラ・ラ・ランド」

トム・クロス

「ムーンライト」

ナット・サンダース、ジョイ・マクミロン

 

★美術賞★

【受賞】「ラ・ラ・ランド」

〜以下ノミネート〜

「メッセージ」

●「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」

●「ヘイル、シーザー!」

●「パッセンジャー」

 

★衣装デザイン賞★

【受賞】「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」

コリーン・アトウッド

〜以下ノミネート〜

●「マリアンヌ」

ジョアンナ・ジョンストン

●「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」

コンソラータ・ボイル

●「ジャッキー  ファーストレディ  最後の使命」

マデリーン・フォンテーヌ

●「ラ・ラ・ランド」

メアリー・ゾフレス

 

★メイキャップ&ヘアデザイン賞★

【受賞】スーサイド・スクワット」

〜以下ノミネート〜

●「幸せなひとりぼっち」

●「スター・トレック BEYOND」

 

★視覚効果賞★

【受賞】「ジャングル・ブック」

〜以下ノミネート〜

●「バーニング・オーシャン」

●「ドクター・ストレンジ」

●「KUBO  クボ  二本の弦の秘密」

●「ローグ・ワン  スター・ウォーズ・ストーリー」

 

★録音賞★

【受賞】「ハクソー・リッジ」

〜以下ノミネート〜

「メッセージ」

●「ラ・ラ・ランド」

●「ローグ・ワン  スター・ウォーズ・ストーリー」

●「13時間  ベンガジの秘密の兵士」

 

★音響編集賞★

【受賞】「メッセージ」

〜以下ノミネート〜

●「バーニング・オーシャン」

●「ハクソー・リッジ」

●「ラ・ラ・ランド」

●「ハドソン川の奇跡」

 

★作曲賞★

【受賞】「ラ・ラ・ランド」

ジャスティン・ハーウィッツ

〜以下ノミネート〜

●「ジャッキー  ファーストレディ 最後の使命」

ミカ・レビ

●「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」

ダスティン・オハローラン、ハウシュカ

「ムーンライト」

ニコラス・ブリテル

●「パッセンジャー」

トーマス・ニューマン

 

★主題歌賞★

【受賞】“city of stars”

「ラ・ラ・ランド」

〜以下ノミネート〜

● “Audition(The Fools Who Dream)”

「ラ・ラ・ランド」

● “Can't Stop the Feeling”

「トロールズ」

● “The Empty Chair”

「Jim : The James Foley Story(原題)」

● “How Far I'll Go”

「モアナと伝説の海」

 

★長編アニメーション映画賞★

【受賞】ズートピア」

〜以下ノミネート〜

●「KUBO クボ  二本の弦の秘密」

●「モアナと伝説の海」

●「ぼくの名前はズッキーニ」

●「レッドタートル  ある島の物語」

 

★外国語映画賞★

【受賞】「セールスマン」(イラン)

〜以下ノミネート〜

●「ヒトラーの忘れもの」

(デンマーク)

●「幸せなひとりぼっち」

(スウェーデン)

●「タンナ」

(オーストラリア)

●「ありがとう、トニ・エルドマン  」

(ドイツ)

 

★長編ドキュメンタリー映画賞★

【受賞】「O.J. : Made in America」(原題)

〜以下ノミネート〜

●「海は燃えている  イタリア最南端の小さな島」

●「私はあなたのニグロではない」

●「ぼくと魔法の言葉たち」

●「13th 憲法修正第13条」

 

★短編映画賞★

【受賞】「合唱」

〜以下ノミネート〜

●「Ennemis Interieurs(原題)」

●「彼女とTGV」

●「Silent Nights(原題)」

●「タイムコード」

 

★短編ドキュメンタリー映画賞★

【受賞】「ホワイト・ヘルメット  シリアの民間防衛隊」

〜以下ノミネート〜

●「最後の祈り」

●「4.1 Miles(原題)」

●「Joe's Violin(原題)」

●「Watani : My Homeland(原題)」

 

★短編アニメーション映画賞★

【受賞】「ひな鳥の冒険 」

〜以下ノミネート〜

●「盲目のヴァイシャ」

●「Borrowed Time(原題)」

●「Pear Cider and Cigarettes(原題)」

●「Pearl(原題)」

 

 

 

〜以上24部門

 

 

 

 

はじめまして!まずはこのブログについて勝手に語ります。

どうも初めまして、GAYKUSOUacademy です。

このブログを書いたり書かなかったり、時には関係無いかのように眺めたりしようと思っている者です。

 

アカデミー賞を逆走しようぜ。ってブログでいきなりこんな事を言うのもあれですが、まず大前提として、どの部門にしろアカデミー賞を受賞した作品がその年で1番良い作品というわけでは決してないです。

アカデミー賞にノミネートすらされなくても素晴らしい映画は普通に沢山あります。

 

ではなぜこのブログはアカデミー賞なのか、目安になると思ったからです。

 

誰に対して、映画に興味を持ち始めた人達にです。

 

この文章を読んでいるような人はきっと映画が好きだと思うので分かってもらえると思いますが、身近な友達などが深く味わうという意味で映画に興味を持ってくれると嬉しいですよね。

そして映画に興味を持ったら、今流行っているものではなく過去の映画も観てみたくなると思うんです。

実際に僕の友達がそうで、映画というものに興味を持ち始めてくれたは良いけどどの作品を観ればよいのか沢山ありすぎて迷い、だから適当に検索して評価が高かったり名作と言われている作品を観てみるが全然ピンとこない。

そして、こちら側も膨大な作品群の中でどの作品を紹介しようか迷う、どうせならば出来るだけ娯楽大作映画以外の作品を紹介したい、そんな時にアカデミー賞はやはり目安として良いんじゃないかと思いました。

 

批評や解説じゃなくなぜ“紹介”なのか、さっき言った映画に興味を持ち始めた友達と話していて感じたのは、完全ネタバレ有りで深い考察の上での解説や批評というのやはりある程度の映画を味わう下地がある人へ向けられたものだということ。

だからまず、その手前の空白を、まずは映画というのは総合芸術という“立体物”だということを、こんな風に観たらこの映画は面白いんじゃないかという“紹介”を通じて感じてもらえたらきっと楽しみ方が広がると思い映画紹介ブログにしました。

なので、基本的にこのブログは紹介しようという作品に対して否定的な事は書かないし点数もランクも付けません。

 

ブログタイトルの下に書いてある“少しのネタバレ”とは、厳密なネタバレ禁止主義ではなく、少なくともあらすじ以上には踏み込んで話したいと思っています。

あらすじはあくまであらすじであり、最低限必要な情報を簡潔にまとめたもの、その事務的な文字の情報に人の熱を込めてこそ紹介だと思います。

どこまで踏み込むかの度合いは、作品を観てない人には何のことか分からないが色々と想像は膨らむ、かたやすでに観た人には頷いてもらえる、それぐらいが狙えれば良いかなと思います。

 

なので、おそらく映画に詳しい方がこのブログをご覧になられた時は「こいつは今更何を当たり前な事を言ってやがるのかい…」と思うことも多々あるかもしれませんが、暖かい目で見てもらえれば幸いです。

 

挨拶も込みで長々と書いてきましたが、ここからアカデミー賞の第1回目を目指して気長にやっていきます。

というか逆走した先その辺の作品のソフトはあるのか?そもそも紹介する需要なんてあるのか!?その頃僕のモチベーションはどうなってるのか!??そんな問題を色々と先送りしながらまずはやってみます。こんなブログがあってもいいでしょう。

ということで、この先は好き勝手に楽しんで書いていこうと思います。

 

友達と話すように。